命とお金に関わる保険は、生きている限りほとんどの人にとって必要不可欠な金融商品ですが、近年、その種類や保障内容が多様化・複雑化しています。本記事では、保険ショップを経営する筆者が、保険選びの際、雑誌やインターネットで知識を身につけることが危険な理由を解説します。

「売れている保険」がベストな保険ではない!

雑誌では「売れている保険ランキング」や「プロがお勧めする保険商品ベスト3」といった記事の特集が組まれることがあります。

 

これらの記事がどれだけ参考になるのかというと、「このような保険商品もあるのだな」という情報収集程度に留めておいたほうがよいでしょう。

 

時々、保険ショップの窓口にも「この保険に加入したいのですが」と具体的な保険名を挙げるお客様がいらっしゃいます。先ほどのような雑誌記事やインターネットなどで情報を集め、調べてきたのだと思われます。

 

これには少し問題があります。

 

お客様が保険に関心を持ってくださるのはとても良いことですし、プランナーに丸投げするのではなく、保険選びに積極的に関わろうという姿勢を持ってくださるのは、保険を扱う私たちにとって嬉しいことでもあります。

 

しかし、あまり早いうちに一つの商品に絞り込む、いわゆる「決め打ち」はしないほうがよいと考えています。

 

なぜなら、本当はもっとお客様の要望に適した保険が提案できる可能性があるからです。保険ショップは数多くの保険会社の商品を取り揃えていますから、選択肢もたくさん用意できます。それなのに最初から保険を一つに絞り込んでしまうと、自ら選択の幅を狭めるどころか、その他の提案を拒否してしまうことになります。

 

このようなときには、お客様が選んだ保険の説明をするのはもちろんですが、併せて保険の考え方や意義を紹介し、もう少し幅広い視点から保険を選んでみることを提案しています。

 

もちろん、さまざまな保険を検討した結果、最終的にお客様が最初に選んだ保険がベストだと判断されるかもしれませんが、そうではない場合もあります。最初から欲しい保険を一つに絞り込んでしまうと、その保険がベストではなかった場合に、本来選ぶべきプランを見逃してしまうことになります。

 

特に、雑誌やインターネットの「人気の保険」や「売れている保険」といった記事は、選び方や誰が選んでいるかによってもランクインする保険は変わってきます。ランク外でも良い保険はたくさんありますし、毎月のように新しい保険が発売され、ランキングも変動します。もし、ランキングでいう「良い保険=1位の保険」に加入し続けたいのなら、常に1番の保険に加入し直さなければなりません。

 

また、人気がある保険がすべての人にとってベストな保険であるとは限りません。一般論、平均値で保険を選ぶことの怖さがあります。

 

オフェンス(攻撃)が違えばディフェンス(守り)も変わります。家族の構成、年齢、年収、そして将来の希望や願いなど、さまざまな要素を勘案し、ベストな保険を提案するのが保険のプロである私たち保険プランナーの仕事です。

 

雑誌の記事にモデルプランとして家族構成などが書かれていたとしても、すべての条件が一致しているとは限りません。保険に関して、まったく同じ案件というものは存在しないのです。

保険の勉強より「なぜ保険に入るか」を深めておく

よく、保険選びの本や雑誌には「加入する前に保険の基礎的な知識を学んでおきましょう」と書かれています。

 

保険に関する事前知識は、当然ですが、ないよりもあったほうがよいでしょう。ただし、それは正しい知識に限ります。

 

最近では、インターネット上のQ&Aなどにさまざまな情報があふれています。中には私たちから見ても的を射ているなと感心する回答が寄せられていることもありますが、間違っていたり、偏っていたりする回答も数多く見かけます。インターネットの情報は玉石混淆ですから、何が正しくて何が間違っているのか、その見極めが大切です。それを知らずに誤った情報を頭から鵜呑みにして誤った知識を付けてしまうと、かえって大変なことになります。それぐらいならば、何も知らずに相談に来てくれたほうがお互いに楽かもしれません。

 

なぜなら、保険の相談に来ていただいたとしても、まずその知識の誤りを修正するところから始めなければならなくなり、ゼロどころかマイナスからのスタートとなってしまうからです。

 

大抵の人は自分の知識が間違っているとは思いませんから、そこを修正するのにとても時間がかかってしまいます。そうなるとなかなかライフプランニングや保険選びといった本来やらなければならないことに進めません。下手をすると、保険のプランニングまでたどり着けずに諦めてしまう可能性すらあるでしょう。

 

保険には専門用語がたくさんありますし、保険制度の変更もたびたび行われます。それらを一つひとつ掘り下げて勉強するよりも、まずは全体像として保険は何のためにあるのか、何を考えて保険を選べばよいのかといった「何のために」を中心に考えてみてください。

 

なにしろ、皆さんが全保険会社のすべての保険商品について学ぶのは事実上不可能ですし、新しい保険もどんどん出ていますから、それらをすべて把握しようとしても、一般の人にはとても追いつけません。

 

個々の保険商品に対する知識は、どう考えても保険のプロのほうが詳しいですし、彼らにはこれまでの経験則なども踏まえてお客様が必要としている保険をセレクトし、お勧めすることができます。

 

餅は餅屋と言いますから、プロに任せるべきところは任せ、お客様はライフプランについて考えたり、家族で話し合って思いを共有するといった、自分にしかできないことに時間と労力を使ったほうがよいと考えます。

死亡保険金は「命の値段」

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杉山 将樹

幻冬舎メディアコンサルティング

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