印紙税に関わる業務…税理士はどこまでサポートしてくれる?

印紙税に関わる業務…税理士はどこまでサポートしてくれる?

今回は、税理士が対応可能な印紙税に関わる業務範囲についてです。※本連載では、元・国税調査官の佐藤明弘氏による著書『税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜』(第一法規)より一部を抜粋し、税務調査官の目線から、印紙税調査の際に注意すべきポイントや、税務調査で指摘される実務上誤りやすい取扱いについて不納付事例をもとに紹介します。

印紙税の税務調査に税理士は立ち会えるのか?

8 印紙税と税理士業務

 

(1)税理士の役割

 

契約書や領収書の印紙税について、顧問先から税金のことだから税理士なら相談に乗ってくれるものだと考えて相談された経験をお持ちの方は、多数いらっしゃるでしょうし、印紙税の単独調査に限らず、他の税目との同時調査の際にも、印紙税についてはチェックされる項目となっていることから、調査への立ち会いなどを求められる場面も少なからず現実として見受けられるところです。

 

このように、実務上は税理士がサポートできなければならない税目になっていますから、印紙税法についての知識と判断力をも養っておく必要があるといえます。

 

ただ、税理士法第2条(税理士の業務)第1項において、「税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和25年法律第226号)第10条の4第2項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第49条の2第2項第10号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする」とされ、印紙税法その他の一定の租税は税理士業務の対象税目から除かれています。

 

このように、税理士が業務として関与できる税目に「印紙税」が入っていないため、顧問先の「印紙税に関する税務相談に乗れないのではないか」、「調査への対応はできないのではないか」と考えておられる税理士先生も多数いらっしゃることと思います。

 

そこで、税理士法第2条第2項を見てみますと、「税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる」と規定されています。

 

したがって、税理士が「納税義務者の求め」に応じて、その付随業務たる「財務に関する事務」として、印紙税に関する事務を行っている場合には、納税者を指導することは可能なのです。

 

そして、調査への立ち会いなどの対応についてですが、上記のとおり、印紙税は税理士法上の税理士業務の対象から除かれているため、法人税等の税務代理人は印紙税の税務代理人とならないことから、国税当局からの印紙税調査の事前通知や調査結果の内容の説明は必ず納税義務者に対して直接行うこととされています。

 

ただ、実務上、税理士が「納税義務者の求め」に応じて印紙税に関する事務(財務に関する事務)を行っている場合には、調査担当者が必要と認めた範囲で、調査結果の内容の説明等の際に立ち会うことは認められていますので、税理士が調査に立ち会う場合には顧問先の納税義務者からの「事務委任状」を受領しておき、いつでも提示できるようにしておくことが必要と考えます。

 

※ 顧問先の納税義務者に事前通知があった場合に、詳しい内容は事務代理人の税理士に連絡してもらうよう、顧問先から調査官に伝えてもらい、以後税理士が調査官に「事務委任状」を提示の上で、事務代理人の立場で調査官に対応することも可能と考えられますが、担当調査官にはその旨あらかじめ伝えて了承を得ておくことが必要と考えます。

 

[参考]税理士法基本通達第2条《税理士業務》関係

 

(税理士業務)

 

2─1 税理士法(以下「法」という。)第2条に規定する「税理士業務」とは、同条第1項各号に掲げる事務(電子情報処理組織を使用して行う事務を含む。)を行うことを業とする場合の当該事務をいうものとする。

 

この場合において、「業とする」とは、当該事務を反復継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しないものとし、国税又は地方税に関する行政事務に従事する者がその行政事務を遂行するために必要な限度において当該事務を行う場合には、これに該当しないものとする。

 

(税理士業務の対象としない租税に関する事務)

 

2─2 法第2条第1項本文かっこ書及び税理士法施行令(以下「令」という。)第1条の規定により税理士業務の対象としない租税に関する事務は、法第2条第2項及び税理士法施行規則(以下「規則」という。)第21条に規定する財務に関する事務に含まれることに留意する。

行き過ぎた節税策には要注意!

(2)印紙税の指導に当たっての視点

 

顧問先の納税義務者への印紙税に係るアドバイスに当たっては、まずは、顧問先が作成する各種文書の存在、顧問先における文書管理の実情などを把握する必要があります。

 

というのも、印紙税調査で、本社内での作成文書については、総務部や営業部などの各部署において基本的に把握しているのですが、支店や工場の現場において独自の様式により日々の取引に係る各種の文書が作成されている場合には、これらの文書の存在を本社の各部署で把握しきれていないために、不納付文書の指摘を受ける場合がまま見受けられるからです。

 

また、顧問先から節税方法についてのアドバイスを求められる場合もあるかと思いますが、合法的な節税方法のアドバイスはよいのですが、行き過ぎた節税方法を指導した場合には後々の税務調査において問題が生ずる場合もありますから、慎重な対応に留意する必要があります。

 

文書の記載内容に工夫を試みて、1つの課税事項は文書から記載をなくしたものの、生兵法で印紙税法上の他の号の課税事項は残ったままであることには気がつかずに、不納付を指摘されてかえって税負担が増してしまう場合なども見受けられます。

 

例えば、請負契約書には契約金額を直接記載しないこととし、請負業者の作成した見積書を引用する形にしたところ、税務調査で「引用している見積書の内容は請負契約書に記載されているものとなる」として、結局見積書に記載されている見積金額が契約金額と認定され、多額の過怠税を納付することとなった事例などがあります。

 

また、例えば、印紙税の税負担の軽減を意識するあまり、印紙税の課税事項の記載を省略化したり、表現ぶりを変えてみたりすることで、取引の相手方との契約関係が判然としない契約内容となってしまい、後日の紛争解決手段として契約書の役割が果たせないような文書となってしまう場合がまま見受けられます。

 

したがって、税負担の軽減策のアドバイスを行うに当たっては、契約書の本来の作成目的や契約当事者間で必要となる証明事項など、契約書の役割が何であるのかの視点を忘れることなく、その役割を十分に発揮できる内容となるようなアドバイスが当然に要求されるものと考えます。

 

その上で、印紙税法上の課税事項に係る取扱いや、所属決定ルールなどを十分に認識し、これらのルールに基づいた節税策の検討を行っていくことが肝要と考えます。

 

本連載は、2018年9月30日刊行の書籍『税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜』(第一法規)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

※無断複製・転用・公開、第三者使用を禁じます。

税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜

税務調査官の視点からつかむ 印紙税の実務と対策〜顧問先に喜ばれる一歩踏み込んだアドバイス〜

佐藤 明弘

第一法規

国税当局での実務経験豊かな著者が、税務調査で指摘された実務上誤りやすい印紙税の取扱いについて、具体的な契約書例を示しながら解説した書籍。「契約書をこのように変更すれば印紙税の負担を軽減できる」等、顧問先に喜ばれ…

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