今回は、ギャラリーで芸術鑑賞する方法を紹介します。 ※本連載では、芸術をたしなむことによるビジネス上のメリットのほか、芸術の魅力や味わい方まで、銀座で画廊を経営するギャラリスト(美術商)がわかりやすく解説します。

緊張感は必要でも、プレッシャーを感じる必要はない

作品や作家との距離の近さが魅力のギャラリーですが、もう一つ、まだ世の中に広く知られていない新しい作家に出会えるという点もあげられます。今まで観たことのないような新しい感性や個性を発見できるので、とても刺激的な体験になると思います。

 

また、そういう若い作家の作品は、価格も比較的安いものです。気に入った作品があれば、購入して手元に置けるチャンスもあるでしょう。今後、その人がより一層活躍できるように、応援するつもりで購入するのもよいと思います。時を経て、そのアーティストが世界的に有名になることだってあり得ます。目をかけた作家が大きく羽ばたいていくのを楽しみに、継続して応援していけるのもギャラリーならではの楽しみです。

 

ただ、「高い作品が売られている」「購入しなければいけないのでは?」というプレッシャーを感じて、「ギャラリーはやっぱり敷居が高い!」と感じる人もいるでしょう。

 

勘違いしてほしくないのは、「常に緊張していなくてはいけない」「作品を買わなくてはいけない」と言っているわけではありません。

 

考えてみてください。店で食器を手に取るときは割らないように慎重に扱うでしょうし、売られている洋服を汚れた手で触る人はいないはずです。また、お店に入って買わないことがあっても、怒る店員さんはいないはずです。

 

ギャラリーもそれと同じです。作品は商品でもあるので壊さないように注意してほしいというだけですし、買わない人は入ってきてほしくないなどと思ってもいません。

 

美術商は自分が「すばらしい!」と感じた作家や作品を、できるだけ多くの人に知ってほしいと願っています。ですから、多くの人にその作品を観てもらえるのは、本当に嬉しいのです。

好みの企画展、ギャラリーを選ぶ方法は?

では、「ギャラリーに行ってみたい」と思ったら、どうやって場所を選べばよいのでしょうか。ギャラリー選びの判断基準となるのが、その種類です。

 

ギャラリーには大きく二つの種類があり、企画画廊(コマーシャル・ギャラリー)と貸画廊(レンタル・ギャラリー)に分けられます。

 

企画画廊は、自分たちが国内外から発掘した作家と契約を結び、展覧会を企画・開催するギャラリーです。なかには、有名な物故作家(亡くなったアーティストの作品)を扱うギャラリーもあります。

 

一方、貸画廊は、展覧会を開きたい個人や団体に、有料でスペースを貸し出すギャラリーです。ギャラリーによっては作品のレベルを審査するところもありますが、普通はお金を払えば、誰でも展覧会を開くことができます。

 

そのため、一般的に企画画廊のほうが、厳選された実力のあるアーティストが紹介されていると考えてよいでしょう。

 

私のギャラリーは、前者の企画画廊です。私たちがその実力と作品のすばらしさに惚れ込んだアーティストを多くの人に知ってもらうため、さまざまな展覧会を行っています。

 

もう一つ、判断材料となるのは、ギャラリーの個性です。

 

企画画廊の場合、取り扱うアーティストや展覧会の内容は、ギャラリーによってまったく違います。日本画を多く扱うところもあれば、現代アートを中心に取り扱うところもありますし、写真を専門的に取り扱うギャラリーもあります。

 

展覧会の企画に関しても、それぞれの画廊の色が出ています。例えば私のギャラリーでは、個展だけでなく、一つのテーマを設けて、さまざまなアーティストにそのテーマに合わせた作品を創作してもらう企画を行ったりもしています。

 

例を挙げると、以前に行ったのが「妖怪」をテーマにした展覧会です。妖怪というお題で各作家が創作した絵画や立体表現を展示するほか、妖怪茶席を開催。その際は、老舗の和菓子屋に妖怪をかたどった和菓子をオリジナルで作ってもらったりもしました。

 

そのほか、「赤」をテーマにした展覧会や、さまざまな画家が扇面の模様を描いた扇子の展覧会など、趣向を凝らした企画展を多く行っています。この展覧会には、中島千波(なかじまちなみ)先生と中野嘉之(なかのよしゆき)先生のような日本画家の大御所の先生方にも参加していただいてます。中島先生はご自身が画壇のトップランナーでありながら、東京藝大のデザイン科描画研究室で教授をされていたときには、若手アーティストを数多く輩出されました。この扇子展にも若い作家が大勢出品するということで、若手の刺激にもなるだろう、と出品してくださいました。

 

企画展の際はいつでも、アーティストの皆さんも楽しんで協力してくれていますし、お客様にも毎回ご好評をいただいています。

 

画廊がどんなアーティストを取り扱っているのか、どんな企画展を行っているかは、ギャラリーのホームページを見るとよく分かります。自宅や会社の近くにどんなギャラリーがあるのか、どんな特徴があるのか・・・インターネットを使って楽しみながら調べてみてください。

 

また、前回紹介した月刊誌『アートコレクターズ』を参考にするのもよいでしょう。

 

気になるアーティストや作品、企画展が見つかったら、ぜひギャラリーを訪ねてみてください。もしかしたら、美術作品との運命的な出会いが待っているかもしれません。

 

教養としての「芸術」入門

教養としての「芸術」入門

山田 聖子

幻冬舎メディアコンサルティング

多数メディアで活躍中の「ギャラリスト」が解説! 初心者でも楽しみながら学べるはじめての「芸術」ガイド。 【目次】 第1章 日本人は「芸術」への関心が不足している 第2章 「芸術」は世界共通の“コミュニケーションツ…

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