2018年6月、改正医療法の施行によって、医療機関のWebサイトの掲載内容を含む「医療広告」に規制が入ることになりました。虚偽及び誇大広告によるトラブルが後を絶たなかったためです。本連載では、着実な集患を実現する「適切な医療広告」の作成術・発信術を探ります。今回は、患者に「自由診療の効果」を正しく、かつ広く啓蒙する方法を説明します。

治療費が高い、効果が曖昧といったイメージの自由診療

医療技術の発展は日進月歩で、以前では考えられないような治療が受けられる時代になりました。しかし、国の認可が下りていない薬剤や治療機器を提供する、「自由診療」とされるものも数多くあります。

 

今回は、株式会社幻冬舎ウェブマが、2018年8月に全国の40代~60代以上の男女500人に対して行った「『自由診療』に対する意識調査」のデータを元に、どのようにして自由診療への患者の理解を深めるべきか、どのように情報を発信していくべきなのかを考えます。

 

まずは「自由診療」に対して、一般の人々がどのようなイメージを抱いているのか調査しました。

 

 

[図表1

 

最も多かった回答は、「治療費が高い」で73.6%でした。そもそも自由診療という言葉が保険外診療のことを指すので、通常の保険診療と比べれば治療費が高額になるのはやむを得ません。

 

2番目は、「どの医療機関を選んでよいか分からない」で33.4%でした。自由診療と一口に言っても、がん治療からインプラント、アンチエイジングまで、様々な分野の治療が存在します。自由診療にあたる治療方法への知識が少ない段階では、何を基準に医療機関を選べばいいのかわからない、というのが正直なところでしょう。

 

3番目は、「治療効果が曖昧」で23.2%でした。こちらも治療方法の知識不足が大きな要因になっていると思われます。

 

次は「治療効果が期待できるなら実施してみたい」で、15.0%にとどまりました。回答率としては少なくないものの、どちらかというとネガティブなイメージが先行していることがわかります。

 

2018年6月に施行された改正医療法による医療広告規制の影響も大きく、従来のやり方では、このような患者のイメージを覆すのが難しいというのが現状です。しかし、このまま手をこまねいているだけでは、自由診療への理解は深まりません。医療機関は、自由診療で「できること」を患者に周知していく努力が必要です。

 

例えば、「治療費が高い」というイメージに対しては、2016年にその適用範囲が拡大された「混合診療」の存在を患者に周知することで、その不安を軽減することができます。

 

混合診療とは、通常の保険診療と、先進医療などの自由診療を併用することですが、その存在をしらない、もしくは制度のことをよくわかっていない患者は多いようです。

 

「どの医療機関を選んでよいか分からない」というイメージに対しては、薬機法で承認された最新の医療機器を導入していることを患者にわかりやすく伝えることで、逆に患者が医療機関を選ぶ際のアピールポイントにすることができます。

 

「治療効果が曖昧」、これは未知の治療方法に対する患者の不安が大きな要因となっていると推測されるため、治療実績の多さや、その治療にかかる費用や治療方法自体の説明を丁寧に行うことで、患者のイメージを払拭することができます。

 

自由診療を広く根付かせるためには、これらのイメージから「治療効果が期待できるなら実施してみたい」というポジティブなイメージに転換させることが重要となります。これらの活動は一朝一夕では足らず、地道な取り組みを継続的に続けることが必要です。また、一人でも多くの患者に伝え、患者全体の意識を変えていくという意気込みが求められるでしょう。

 

これらを同時に達成しようと考えるならば、患者の知識やニーズに合わせて、その内容を補足・修正できるWebコンテンツを有効活用していくことが一番の近道となります。スマートフォンやタブレット端末の台頭で、医療機関に関する情報収集が容易になった今、Webサイトの活用は、自由診療を根付かせるために必要不可欠なものとなっていくでしょう。

患者は「自由診療がいかにQOLを高めるか」を知りたい

ではここで、一般層がどのような自由診療なら受けたいと考えているのか、調査データを元に見ていきましょう。

 

[図表2

 

最も多かった回答は「がん」で、32.4%となりました。自由診療の中では、やはり抗がん剤や最先端の治療技術で話題になることの多い「がん治療」が注目を集めているようです。自由診療のがん治療は先進医療として認められているものも多く、保険の特約などで負担を軽減することもできるため、より現実的な選択肢として一般層にも受け入れられているのでしょう。

 

次に多い回答を集めたのは、「再生医療(ひじ、膝関節等の痛みの除去など)」で17.0%でした。ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の「iPS細胞」の影響も大きいと思われますが、失った機能を回復させる再生医療への期待の高さが伝わってきます。

 

 

これらの回答から、現状を打破する治療方法としての自由診療に、患者がとても期待していることがわかります。他にも「美容整形・アンチエイジング」「インプラント」「歯科矯正」「白内障」が、受けてみたい自由診療の候補として挙げられました。

 

これらに共通するのは、治療後の患者のQOL(クオリティオブライフ)を高める効果があるという点です。自由診療は「QOLを高めるもの」というイメージが無意識のうちにあるようです。

 

それならば、医療機関はこれらの自由診療の「治療の効果」に加えて、治療後の患者の日々の生活にも目を向ける必要があります。治療を受けた患者がその後どうなったのか、どのような生活を送っているのかは、これから患者となる可能性がある層にとって、大変興味のあることです。

 

Web上にコミュニティサイトなどを開設し、治療を受けた人、これから治療を受ける人の生の声を伝えていくことは、一般層の自由診療への心理的ハードルを下げるために、大きな役割を果たしていくと考えられます。

Webサイトでの「地道な啓蒙活動」が必要不可欠

以上が、自由診療に対する意識調査となります。最先端の医療技術を導入していることもあり、未知への不安が先行している自由診療ですが、広く根付かせていくには地道な啓蒙活動が必要となります。

 

一人でも多くの患者に受け入れてもらい、ポジティブなイメージを浸透させるためには、患者のニーズに合わせた内容の補足や修正が容易で、時や場所を選ばず情報を届けられるWebサイトの活用が必要不可欠な状況となっています。

 

また、患者に「自由診療はQOLを高めるものだ」と認識されている現状をよく理解することも重要です。治療の情報だけで完結するのではなく、治療を含めた患者の生活の様子を継続的に提供することが、自由診療への期待をさらに高めることにつながるでしょう。

 

自由診療が置かれている環境は今後さらに変わっていきます。しかし、患者が自由診療について知る術はそれほど多くないため、医療機関が自由診療についての情報を、積極的に正しくわかりやすく伝えていくことが、今後は強く求められるのだと思います。

 

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