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連載建築デザインの力で「変形地」の価値を高める方法【第8回】

短すぎる「接道の長さ」が土地活用の妨げとなる理由

接道建築基準法東京都建築安全条例特殊建築物斜線制限

短すぎる「接道の長さ」が土地活用の妨げとなる理由

前回は、旗ざお状の土地でも建設できる「長屋」について説明しました。今回は、敷地と道路が接している長さが短い土地の活用方法について見ていきます。

接道の長さが短いと「床面積」が確保できない

道路付けの悪さが、土地活用の妨げになる例はまだまだあります。敷地の面する道路にある程度の幅員があったとしても、そこに一部しか接していないような場合には、土地の活用がやはり制限されます。

 

それは例えば、敷地の道路に面する一角だけ所有地ではないという場合です。広大な空き地の一角、道路に面した前面にだけ、1、2軒住宅が残っているような土地が、都市部では時々見掛けられます。そうした間口部分の一部に他人の土地が残る敷地です。

 

この場合、問題になるのは、接道の長さというものです。

 

接道の長さとは、敷地と道路が接している長さです。ここで道路というのは、あくまで建築基準法上の道路。それは原則として、幅員4m以上のものを指します。通行の役目を果たす、見た目には道路と呼びうるものでも、幅員4mに満たないものは、建築基準法上の道路とは認められません。この幅員4m以上の道路に、敷地は2m以上接していないといけません。

 

これだけであれば、恐らくそう問題にはならないのかもしれません。建て詰まりの住宅地でもなければ、建築基準法上の道路に面する土地は、たいてい2m程度はその道路に接しているものです。

 

それに、たとえ幅員4m未満であっても、同2.7m以上であれば、行政による一定の手続きを経たうえで特別に道路として認められる場合があります。敷地の前を通る道路との関係でそこに建物が建てられるか否か、心配な場合には、一度、専門家に相談するといいでしょう。

 

問題は、この建築基準法の規定に加え、東京都建築安全条例で接道長さが定められていることです。共同住宅のような「特殊建築物」の場合、その床面積に応じて求められる接道長さが決まっています。

 

条例の規定では、次のように定められています。

 

床面積500㎡以下         4m
床面積500㎡超1000㎡以下   6m
床面積1000㎡超2000㎡以下  8m
床面積2000㎡超         10m

 

間口部分の一部に他人の土地が残る場合、接道の長さはその分短くなります。例えば、幹線道路沿いに間口15mの土地を持っていたとしましょう。ただ、残念なことに道路沿いの一角に間口7mの他人の土地が挟まっています。

 

この場合、接道長さは15mから7mを引いた残りの8mです。したがって床面積2000㎡以下の建物しか建てられません。敷地面積と容積率から計算してそれ以上の床面積を確保できるとしても、東京都では建築安全条例で2000㎡を超える建物の建設が認められないのです。

隣接地を買い増し、接道長さを伸ばすという方法も

この場合、土地を買い増して接道長さを確保するほかありません。一角に挟まっている間口7mの土地を手に入れられれば一番でしょう。そうすれば、形も整います。もっとも、そういう条件になってしまったいきさつを思えば、それはそう簡単なことではないと考えられます。その場合には、隣接地を買い増し、それによって接道長さを伸ばすことが一つの手段として考えられます。

 

東京・蔵前ではこうした提案によって変形地に10階建ての自宅兼賃貸マンションを建てることができました。

 

依頼主はAさんです。Aさんは表通りに面して自宅兼事務所を、その奥に倉庫を持っていました。それぞれ築30年と築40年。老朽化で設備に故障が起きたり雨漏りが生じたりしていたので、建て替えを検討していました。

 

ところが、プランの作成をどこに頼んでも、満足のいくものができません。接道条件が悪く、床面積を500㎡までしか確保できないからです。敷地にはムダな空きが生じ、その広さを十分に生かすことができません。

 

人を介して紹介された筆者がまず提案したのは、隣地を購入し、床面積1000㎡・地上10階建ての建物を建てる計画です。隣地には倉庫が建っていて、土地所有者は売却の意向を持っていました。売買交渉におよそ1年はかかりましたが、最終的には買い取ることに成功しました。

 

こうして建てた建物は、1階をエントランスと店舗に、2階から8階までを賃貸住戸に、9階と10階をAさんのご自宅に充てています。賃貸住戸はAさんのご意向から、女性に喜ばれるものを目指しました。内装は白を基調にし、オートロックを採用したり収納量を豊富に確保したりするなど、女性のニーズに応えようと努めました。

 

完成は2004年5月です。その後、すぐに満室になり、入居待ちの状態になったほど好評でした。

建築法規の運用で床を有利に確保する

注意していただきたいのは、ここまでで紹介してきた長屋建てや接道長さの例はあくまで東京都の建築安全条例に基づく話であるという点です。東京都以外の土地であれば、また別の建築基準条例が適用されます。

 

旗ざお状の土地に共同住宅は建てられないものの長屋建ては認められるのか、床面積2000㎡超の建物を建てるには接道長さを10m確保しないといけないのか・・・それらの可否はすべて、活用を図ろうとする土地のある地域の建築基準条例で規定されている内容によって異なってきます。

 

いずれにしても、これらの建築法規を守ったうえで、できるだけ多くの床を確保するにはどうするか、そこがポイントです。

 

事業のために土地を新しく手当てするのなら、例えばできるだけ道路付けの良い土地を手に入れることもできるのでしょうが、先代から譲り受けた土地ならそうもいきません。その場合には、建築法規で求めていることには従いながら、できるだけ多くの床を確保できるように工夫を凝らす必要があります。

 

できるだけ多くの床を確保するための手段として、建築基準法にはっきりとうたわれている緩和規定、つまり何らかの条件を満たす場合には通常の規定を緩和するというものを活用する方策も考えられます。

 

一般にはあまり知られていないと思いますが、その一つに天空率と呼ばれる考え方が挙げられます。この考え方を取ると、建物の高さを制限する斜線制限という規制の適用を受けずに済むのです。

 

次回はこの「天空率」について、より詳しく説明します。

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

宮坂 正寛

株式会社環境建築設計 代表取締役
株式会社六耀 代表取締役 

早稲田大学理工学部建築学科卒業。「環境と人との接点を意識し心を配ること」を基本に、土地活用企画、分譲・賃貸マンションの企画・設計・施工管理、賃貸マンションの監理、建て替え、大規模修繕、コンサルティングなどを手がけ、35年間で300弱の竣工物件の実績を持つ。

著者紹介

連載建築デザインの力で「変形地」の価値を高める方法

変形地の価値を高めるマンションづくり

変形地の価値を高めるマンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地・・・。活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために…

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