前回は、米国移住の選択肢の一つであるアメリカの「EB-5投資永住権プログラム」の参加基準について解説しました。今回は、申請手続きの流れを見ていきます。

担当弁護士と共に「投資先プロジェクト」を選定

第2回ではプログラム誕生の背景や参加基準について説明しましたが、最終回の第3回は、申請手続きの流れやEB-5の対象となる投資物件についてお話していきましょう。

 

EB-5投資永住権プログラムの手続きに先立ち、まずは移民申請を行う弁護士と投資先プロジェクトの選定を行います。弁護士との契約が済んだら、担当弁護士の指示に従って移民申請に必要な書類収集を行い、申請書類の作成に取り掛かっていきます。投資実績も申請書類の一部となりますから、選定した投資先への投資の手続きもこの準備期間中に行っていくことになります。

 

申請準備が整ったら、アメリカ移民局へ請願申請を行い、書類審査へと進みます。移民局による審査が終了し認可が下りると、「ナショナルビザセンター」と呼ばれる機関へ書類が転送され、各国の米国大使館での領事面接となります。

 

ここまで来れば、もうあと一息です。あとは大使館で発給される半年間の有効期限がついた暫定的なビザで、一度アメリカへ入国すれば、晴れて永住権者となるわけです。ここまでの申請期間については、申請者の増加に伴い審査が混みあっているため、おおよそ2年から3年程度は見ておいたほうが良さそうです。

 

この時に取得できる永住権は、通常の米国永住権とほぼ同等の権限を持ちますが、発行日から2年間と、有効期限がついた仮のものとなります(条件付永住権)。プログラム本来の主旨である“雇用創出”という目的を、より確実に達成するために移民法が定めている、いわば猶予期間です。

 

雇用創出には相応な期間が必要であり、参加している投資プロジェクトが必要雇用数を十分確保出来ないことが想定されるこの段階で、正規の永住権を取得したからと、申請者に早々に投資を引き上げられてしまったのでは、最終的な雇用創出に繋がらない、という考えがあるようです。実はアメリカ人との結婚の際に取得できる永住権にも、初回は同じく2年間の有効期限付きという、偽装結婚防止策が取られていますが、これと同じです。

 

2年間の有効期限満了前に、投資プロジェクトに予定どおり雇用が創出される見込みがあるかどうか、また、申請者が永住権を継続的に維持できる状況かどうか、再度弁護士をとおして、移民局へ請願申請を行い、審査が行われます(条件付解除申請)。この認可が下りれば、EB-5プログラムにおける永住権申請のプロセスは全て終了です。

雇用創出が認められないと判断=永住権失効!?

気をつけなければならないのは、この条件付解除申請という最終段階において、万が一でも投資プロジェクトに(一投資家あたり10名の)雇用創出が認められないようなことになると、2年間の期限が切れた時点で永住権は失効し、このプログラムでの永住権取得の道は絶たれてしまうということです。

 

言い換えれば、雇用が創出できたかどうか、また、できる見込みが高いかどうか、プログラムへの参加を決めてから何年も後になって細かく審査されるのです。つまり、この段階になって初めて、投資プロジェクトのEB-5としての真価が問われるわけです。

 

そもそも、このEB-5プログラムとは、アメリカの失業率対策として誕生した背景がありますので、このプログラムにおいて本来最も重点をおくべきポイントは、実は投資先プロジェクトの選定とも言えます。昨今世界的にメジャーになり、申請者が激増しているプログラムですから、EB-5対象とうたう投資物件も多く目につくようになりました。

 

EB-5の投資先(ここでは主軸となっているEB-5地域センタープログラムについて主に言及します)としては、最近では商業不動産やホテル、貸付事業やリゾート運営などの事業、コンドミニアムなど多岐にわたっています。

 

ただ困ったことに、安全でEB-5プログラムに適したプロジェクトばかりではなく、中には首をかしげたくなる危ういプロジェクトも多く見受けられます。いくら高リターンや元本保証などをうたった見栄えの良いプロジェクトでも、あくまで永住権の取得を目的とした参加の場合、プロジェクト提供者の永住権取得実績、トラブルの有無などをチェックし、信用性や、雇用創出が可能な将来性の高いプロジェクトであるかどうかを慎重に見極めなくてはいけません。

 

移民局から雇用創出を認められないようなプロジェクトということになれば、そもそも、その時点でプロジェクトの事業計画自体が破たんに近い状態である可能性も高いと考えられます。もし、そのような貧乏くじを引き当ててしまうと、永住権はおろか、大切な資産さえ回収が難しくなることを忘れてはいけません。

 

一度投資を行えば、それなりに長い付き合いになりますので、一時的な仲介者や代理店のような斡旋業者からの話を鵜呑みにするのではなく、直接プロジェクト関係者とのコミュニケーションを重ね、納得のいくまで確認を取る姿勢が大切だと言えます。見掛け倒しの誘惑に惑わされず、ここはひとつ慎重に見極めて頂きたいところです。検討中の投資先の実績などについて、専門の弁護士に確認を取ることも有効でしょう。

 

このEB-5投資永住権というプログラムは、(1)参加基準を満たし、(2)EB-5に精通した信頼できる腕の良い弁護士と、(3)永住権取得実績が高く、計画性や実行性が確かだと確信が持てる投資プロジェクトを選択する、このポイントさえしっかり押さえれば、米国永住権を手にする確率はとても高い、いわば手堅い永住権の取得方法であることには違いないのです。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を示したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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