定年退職時は“まとまったお金”が手に入るタイミングです。住宅ローンを組んでいる場合、退職金を使って「繰上返済」を検討している人も多いでしょう。しかし、YouTubeチャンネル登録者数10万人以上、元俳優という異色の経歴を持つ井上ヨウスケFPは「退職金を使った繰上げ返済はおすすめできない」といいます。いったいなぜなのでしょうか、詳しくみていきます。※相談者の情報はプライバシー保護のため一部変更しています。
住宅ローン残債1,000万円の59歳・定年直前サラリーマン、退職金1,800万円で〈繰上返済〉を検討中だが…FPが「絶対にやめたほうがいい」というワケ【お悩み相談】
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」 来場登録受付中>>
残債1,000万円を繰上返済…具体的な効果は?
なぜおすすめしないのか? というと、借入れの後半での繰上返済はあまりメリットが大きくないからです。
繰上返済を検討する際は、住宅ローンの仕組みを理解しておくことが重要です。
基本的に、住宅ローンの繰上返済は「ローンを組んだ時期に近いほど有利」であり、遠くなればなるほど(完済間近になればなるほど)メリットが減っていきます。
住宅ローンは、一般的に「元利均等返済」という返済方法になっています。金利が変わらない限り「毎月の返済額が一定」で「返済開始から完済まで、月々の支払額が変わらない」ことが特徴です。
元利均等返済の場合、返済期間の経過にともなって返済額の利息分と元金分の割合が変化します。返済当初は利息分の割合が大きく、しだいに元金分の割合が増加します。
たとえば、35年ローンで月々の返済額が10万円だったとしましょう。先述のように、ひと月目と完済月で返済額は変わらず、10万円のままです。ただし、ひと月目は「元本:8万4,000円、利息:1万6,000円」の割合だったものが、完済月はそのほとんどが元本の返済となり、利息分はわずか数百円に変化します。
そのため、ローンの後半で繰上返済をしても、支払う利息を軽減する効果は大きくないのです。
仮に、3,850万円の物件について、0.5%の金利で35年ローンを組んでいる人がいたとします。金利が変動しないと仮定した場合、この人が支払う利息の総額は約347万円です。
そして、今回のAさんと同じように、残債が1,000万円ほどとなったタイミングで繰上返済をしたとしましょう。この場合、いったい、いくらの利息軽減効果があると思いますか?
……答えは、約22万円です。
約1,000万円の資金を使って返済しても、22万円ほどしか利息軽減効果を生み出すことができません。1,000万円に対して22万円というと、約2%です。
たとえば、同じ「1,000万円」の資金があった場合、繰上返済で1度に手放してしまう(2%の恩恵を1度だけ享受する)よりも、資産運用などの方法で時間をかけてお金を育てたほうが有利といえます。
もし、1,000万円を2%で10年間運用できれば、単純計算ですが、1,219万円となり、22万円よりも大きな効果を得ることができます。
つまり、当然投資にはリスクがありますが、1,800万円という大きな資金を活用する方法として、「繰上返済」は少しもったいない選択だということです。
2%の運用利回りであれば、株式の比率を抑えて、債券中心のバランスファンドなどでも達成できます。Aさんはすでに新NISAを活用されているようですので、「繰上返済」よりはこうした「資産運用」を選択肢に入れるのもひとつの手です。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」 来場登録受付中>>