介護業界から人材が他産業へ流出しているワケ

介護事業者の倒産件数が、過去最多となっています。

2024年1月から8月の倒産件数は、114件。前年同期比の44.3%増で、介護保険法施行後でもっとも多い件数となる2020年の85件を大きく上回りました。

赤字を抱える法人の割合も、過去最大です。介護事業主体の社会福祉法人は、45.8%が赤字。要介護3以上の高齢者が利用する「特別養護老人ホーム」は、6割以上が赤字を抱えています。

日本の介護業界最大の課題は2つあると、私は考えています。

一つ目は、社会保障費の増大です。介護事業者の収入の約9割は、国から支払われる「介護報酬」によって成り立っています。ところが高齢者の増加にともない、社会保障費でまかなわれる介護費用が、2000年以降の約20年で4倍に膨らみました。社会保障費が増大し、赤字国債が増えるなかで、介護報酬は物価高や他産業の賃金上昇に追いついておらず、介護事業者が経営難に陥っています。

二つ目は、深刻な人手不足です。主な原因として、賃金など処遇面での改善が進まないといった問題が指摘されています。国も介護業界の処遇改善に取り組んでいますが、従業員への賃金は介護報酬に基づいて算定されるため、2024年の介護報酬改定では、特別養護老人ホームは3%引き上げられたものの、デイサービスなどは1%以下。訪問介護については、4%引き下げられてしまいました。

その結果、介護業界の人材が、他産業へどんどん流出しているのです。