賃貸不動産物件の相続――起こり得る問題とその対策

近年では、各種増税や控除額の減額など、大切な資産を守るための環境が厳しさを増しています。今回は、株式会社財産ドックの加藤豊氏の特別寄稿により、相続開始前の財産評価の重要性を見ていきます。

「相続対策=節税対策」と考えてはダメ

私たちを取り巻く相続関連の各種環境は大きく変化し、とりわけ消費税や所得税、相続税の増税がされるなかで、個人や会社の資産、財産を守っていくのが大変な時代になりました。

 

土地活用や相続対策として、不動産賃貸をされている方は少なくないと思います。少子化や経済の減速で、 最近特に弊社への相談に多いのが、賃貸の空室対策です。都心部においても、近年の賃貸空室率は15%~20%になっており、首都圏郊外は30%の地域があるほどです。最悪、銀行返済の問題はもとより、優良資産でないと、遺産分割の際に「争続」にもなりかねないことを理解しておく必要があるのです。

 

★賃貸不動産の相続の際に心配される問題

 

1.貸家建付地の評価減(30%減)が空室の状況により100%適用されない場合、当初建築会社、銀行の提案である相続税評価の減税効果が薄れ、結果相続納税額が多くなります。

 

2.空室対策として取りあえず家賃を下げたとすると、入居者の質が下がり、家賃回収・管理に手が掛かり、相続人が相続財産として受取りを躊躇又は拒否するケースもあります。

 

3.賃貸物件が複数ある場合、入居率により物件ごとの収益格差で不公平が生じ、遺産分割協議が話し合いでは解決せず、訴訟になってしまうこともあります。

 

4.遺産分割協議が相続開始から10ケ月以内に成立しないと、相続の際の各種優遇措置の適用が受けられなくなり、思わぬ納税をすることになります。平成27年以降は被相続人の4割が相続税申告が必要となり、このうち各種優遇軽減適用を受けてられれば2割の方が納税する事になるという試算もあります。

 

これを避けるための緊急避難措置として、分割協議において不動産を共有にするという手法もありますが、この共有が後に兄弟姉妹の確執につながり、親の思いの届かぬ最悪の結果になることが多いのです。共有は「共憂」になり、「争続」となるので絶対に避けなければなりません。

 

「相続対策=節税対策」と思われている方も多いようですが、相続対策の第一は「分ける対策」、第二は「税金を現金で納める準備」、そして第三は「節約する準備」、この3つの対策のバランスが大切なのです。

 

すでに改正になった小規模宅地の評価減の適用変更は、自宅の承継者がいないことで80%の評価減が受けられず、納税を余儀なくされた方が急増しています。「親孝行者しか評価減を使わせてあげないよ」という税制改正を正しく理解していくことが大切なのです。

 

適切な対応、助言に基づいて賃貸の空室を無くし、喜んで受け継げる不動産を所有し、円滑な相続対策をぜひとも実現していただきたいと思います。

適切な相続対策は、まず資産の「健康診断」から

次に、不動産所有者の悩みは、権利関係・相続・貸宅地・有効利用等様々です。これらのうち、直ちに解決できる事は少なく、裁判等になれば費用と時間を必要とするケースもあります。多くの方は、「何か対策をしなくては・・・」と心配はしても、どこに相談すればよいのか、何から始めたらよいのか分からず、結局何もしていないというのが実情です。

 

こうした不動産の諸問題は、生活習慣病に置き換えると分かりやすいでしょう。例えば糖尿病なら、適切な管理を怠ると手足の切断、失明、透析という最悪の事態を招いてしまいます。病状が顕著にならなけらば治療しない糖尿病患者さんと、悩みのある不動産所有者は、ある意味、近いといえるかもしれません。

 

所有する土地を売るなら、誰しも少しでも高く売りたいと考えますが、地形、間口、駅からの距離、前面道路状況により、たとえ同じ面積であっても、1000万になる土地もあれば、6000万になる土地もあります。地境の争いがあって境界確定ができなければ、どんな希少性のある土地でも売却はできません。貸地などは、所有権価格が坪100万円でも、底地価格は最高40~50万円、緊急処分なら10万円です。

 

賃貸物件の場合、満室経営でメンテナンス良好、入居者の質も高く家賃滞納者ゼロなら高く売ることができますが、老朽化していて入居率も悪く、家賃滞納者もいるとなれば、土地値段からリスク分及び建物解体費まで、数百万円も差し引かれる事になります。

 

相続などで安易に共有名義にしてある不動産では、兄弟姉妹間の経済的価値観や経済状況の相違によって意見統一が図れず、売却時期を逸してしまったり、最悪は身内間での裁判になるのです。

 

所有不動産の「健康診断」をせずにいると、気づけば余分な脂肪(不良資産)がついたり、血(お金)のめぐりが悪く血管が詰まったり、高血圧(地境・滞納等のハイリスク)になったりして、その結果、何かあったとき(症状が現れたとき)には、優良資産から手放すはめになるのです。

 

計画的に低利用地の活用を図る、不良資産から売却をして優良資産に組み替える等の対策を取ることが、節税にもなることを充分に理解していかなければなりません。

 

まさしく、身体と同じく資産も健康になるためには、時間と適切な指導、強い意志がなくてはなりません。相続対策の実行には、被相続人が健康であって、資産状態を安心・良好・高価値のものにしていくことが大切なのです。

本原稿は書下ろしです。内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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  • 【第1回】 賃貸不動産物件の相続――起こり得る問題とその対策NEW

1993年創業。貸地・借地・有効利用などの不動産に絡む相続対策に強みをもつ専門家集団。神奈川県川崎市に本拠地を構え、北海道から九州まで全国47拠点の相談センターを展開する。税理士、弁護士、司法書士、測量士などの専門家集団によるチームコンサルタ ントで、相続にまつわる問題をワンストップで解決。税金対策にとどまらない不動産の特性を考慮した対策で、様々な不動産に関わる問題を解決に導く。人間ドックと同じように財産も年に一度は健康診断が必要とのコンセプトから、地域の人たちの財産を守るための アドバイスを行っている。(写真は取締役の加藤豊氏)

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