危なかった…賃貸マンションを経営する70代母が「3億円」騙し取られかけたワケ。「相続対策」で待ち構える、悪徳不動産会社の功名なワナ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】

危なかった…賃貸マンションを経営する70代母が「3億円」騙し取られかけたワケ。「相続対策」で待ち構える、悪徳不動産会社の功名なワナ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

同世代の身近な人の死を経験するなど、自身の相続が気になり始める70代。相続対策においては、特に不動産を所有している場合、早めの準備が肝要です。しかし、焦って1人で話を進めてしまうと、不動産会社の巧妙な罠にハマってしまう可能性も……。本記事では、賃貸を経営する松田香織氏(仮名)の事例とともに70代で始める不動産の相続対策における注意点について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

不動産会社「このままでは、娘2人が必ず揉めます」

不動産会社の担当から連絡があり面談の予約をした。不動産会社の事務所へ訪問のうえ、相続について個別に話をすることとなった。

 

不動産会社の担当からは、相続の対策を進めるにあたって家族構成を教えて欲しい、とのことであったのでひととおり現状について伝えた。

 

担当からの提案をまとめると、相続においては子供たちの法定相続割合は平等であり、松田さんが所有している不動産はひとつしかないことから間違いなく姉妹間で揉めること、さらには不動産価格が高いいまのうちに売却のうえ、現金化しておかないとあとで後悔する、との内容であった。

 

気持ちとしては、娘2人に平等にわけたいとの気持ちもあったことから、「それも選択肢のひとつではあるか」と担当にいわれるがまま査定依頼書にサインをすることにした。

 

その後、1週間ほどで担当から「いい買い先が見つかったので、すぐにでもご説明したい」との連絡が入った。特に売却する意思表示をした訳ではないので、一方的に進められている感じがして違和感を覚えたが、とりあえず会って話を聞くことにした。

 

面談早々に担当から「買付証明書」なる書面の提示をうけ、

 

「非常にいい条件で買主が見つかりました。松田さんのお持ちの不動産は建物が古いことから、通常であれば土地価格から解体費用を引いた程度が妥当な価格かと思いますが、私の知り合いの不動産業者では建物価格も評価したうえで5億円まで数字を伸ばしてくれました。しかも、私のほうで明確に意思表示をするよう説得をして書面で提示させました」

 

と購入希望価格について説明をしたのち「このような条件はまず出ないので、近日中に売買契約まで取り交わしましょう」と、急かすように話を持ち掛けてきた。

 

松田香織は「いろいろと短期間で活動していただいたのは感謝します。とはいえ、この建物には自宅もあるので、急に結論を出すことはできません。一度持ち帰って検討させてください」と伝え、話を終えることにした。

 

担当からは「買付証明書の期限は1ヵ月なので早めに結論を出してください」と伝えられ、不動産会社をあとにした。

長女が「買付証明書」を見つけ…

結論が出ないまま1週間ほど経過したとある日、長女から「お母さん、この不動産を売却しようとしているの!?」と突然聞かれた。長女が昨夜書類の整理をしていた際に買付証明書をたまたま目撃したようであり、非常に驚いて質問をしたとのことであった。

 

長女からは、夫が生前不動産を将来的に残したい意向を示していたこと、規模や立地の点で価値の高い土地であることから簡単には手放してはいけない、と話していたことを伝えられた。

 

確かに夫はそのように言葉を残しており、自分としても極力そのようにするつもりであったが、娘2人に平等にわける手段として売却も選択肢として考えたことなどを話した。

 

その後、長女と1時間ほど話し合いを行い、頭を整理したが、そのなかで長女が話していた不動産業者が強引に進めている気がする、という点は確かにそのとおりであり冷静さを欠いていたと反省した。

 

そこで、次女および次女の夫に包み隠さず相談することにした。次女の夫は金融機関で勤務しており、人脈も広いことから取引のある不動産コンサルタントを紹介してもらうことになった。

 

次ページ不動産コンサルに相談、売却以外の「手段」とは

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