「いま売る」or「修繕後に売る」…思ったより高い査定価格に揺らぐ心

一方、加藤家も新たな動きがあった。訪問査定による査定価格が出たのだが、思ったよりも高い価格であった。新築マンションの価格高騰により、中古マンションの人気が高まり需要があるからだそうだ。

毎月15万円をコツコツ返済も…いまだ「1,800万円」残るローン

それよりショックだったのは、住宅ローンの残高だ。加藤家のマンションは、購入価格4,500万円、頭金は1,000万円、借り入れ金3500万円。将来のことを考え35年間の固定金利4%を選択、以来22年間、毎月15万円を滞納せずコツコツ返してきた。

手堅く借り入れしたつもりだったが、いまだ半額近い1800万円ほどの残債があるという。それは固定金利が4%と高かったこと、元利均等返済方式を選んでいたのが良くなかったようだ。

返済の内訳をみると、借りた当初の元金は3万8,000円ほどで残り約11万円あまりは利息分、当初は利息ばかり返していたようだ。3,500万円の借り入れに対して利息は約3,000万円かかり、返済総額は6,500万円以上というから驚きしかない。

圭司さんは定年間近…「修繕後の買い替え」を目標に、夫婦が立てたプラン

マンション価格の高騰により、いま売却すれば、幸いにも残債より高く売れそうである。不動産会社へ支払う仲介手数料などを引いても手元に1,000万円以上は残りそうだ。住宅ローン残債があると売却できないと思っていたが、残債があっても残債より高く売れるか、残債を補填できるなら売却することができるという。

圭司さんの58歳という歳を考えると、定年後の再雇用を入れてもいまの会社の制度では、働けるのは10年以下。売却後の住まい、買い替える際の住宅ローンは借りられるのか、老後資金は大丈夫なのかという不安がよぎった。

不動産会社に聞くと、中古マンションの価格は、社会情勢や物件にもよるそうだが、築15年ほどまでの下落率が大きく、変動が小さい時期を経て、築30年ほどで下げ止まるそうだ。自宅マンションはすでに築15年を超えているため、一般的に数年程度だとあまり査定額は変わらず、むしろ大規模修繕を検討中なら修繕後のほうが高くなる可能性があるという。

また、いまはマンション・バブル中で、売却するなら高値で取り引きできるチャンスだという。そこで夫婦で相談した結果、3つの目標を立てた。

①数年後の大規模修繕工事が終わった直後に売却できるよう準備。情報収集に努める。

②60歳の定年後には、できるだけ良い条件で再雇用を目指す。退職金は買い替える物件の頭金にあてる。

③バブル期ではあるが、すぐには売らず数年間はなるべく繰り上げ返済をする。

実際コロナ禍で行けなかった両行の費用分を繰り上げ返済に回すことができた。目標ができると不思議と人生に張り合いが出るものだ。陽子さんは元気ないまのうちにと近くのスーパーで働き出した。しかも、健康のため、2人でウォーキングすることが日課となった。