借地の分割譲渡は可能だと考えられるが…“慎重な対応”が必要か

では、「借地権を分割して譲渡すること」が、「借地権設定者に不利となるおそれ」となるのでしょうか。

この点については、裁判実務では、

「賃借地の一部分の譲渡がすべて不適法とすべきではないが、右譲渡が、賃貸人に著しい不利益を与える場合には、借地法九条の二第二項によりその申立を棄却すべきである。」(東京地裁昭和45年9月11日決定)

という考え方が取られています。

すなわち、借地権の分割については、

借地が分割されることによって、建築基準法上増改築が不可能になり、又は借地の面積が減少し不整形になるなどしてその価値が不当に低下すると認められるときには、借地権設定者に著しい不利益を与えるから、借地権設定者に不利となるおそれがある」(「借地非訟の実務」編集植垣勝裕・338頁参照)

と解されています。

以上を踏まえますと、借地権の分割譲渡については、借地の分割によって残余借地部分の形状や利用方法が著しく制限されるなどの「借地権設定者に著しい不利益」がなければ、認められる余地がある、ということとなります。

ただし、この点については公開されている裁判例情報も乏しいため、その見通しを立てる上では慎重に検討を進めていく必要があると言えます。

※この記事は2019年5月2日時点の情報に基づいて書かれました(2024年1月29日再監修済)。

北村 亮典
大江・田中・大宅法律事務所
弁護士