日本の中小企業「約6割が賃上げ」は悲劇の始まり…。スウェーデンモデルの成功要因と「単なる賃上げ」の落とし穴

日本の中小企業「約6割が賃上げ」は悲劇の始まり…。スウェーデンモデルの成功要因と「単なる賃上げ」の落とし穴
(※写真はイメージです/PIXTA)

社員が自発的に仕事を「愉しむ」ことができるような経営とは一体何か。2023年初頭、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、最大4割という思い切った賃上げを行いました。しかし、「ただ単に賃上げをするだけ」では稼ぐ力どころかヤル気も高まらないと、『賃金が上がる! 指示ゼロ経営』(内外出版社)の著者であり自身も起業家である米澤晋也氏は言います。では、どうすれば意味ある賃上げとなるのでしょうか? 同書の中から一部抜粋・再編集してお届けします。

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ある新聞販売店の例

私は、賃上げの間違いをしでかした張本人です。

 

私はこれまで、新聞販売店を経営してきました。新聞店は代表的な不人気業種です。朝早い、休みが少ない、衛星要因は決して良いとは言えない業種です。その上、衰退産業というおまけ付き。希望が持てない業種の代表格と言っても過言ではありません。

 

私が3代目として家業を継いだ当時、社員のモチベーションは低く、離職も多い状態でした。求人を出しても人が集まらないということで、非常に抵抗がありましたが、しかたがなく賃上げを行いました。

 

折しも「勝ち組・負け組」という言葉が飛び交っていた時代、そして、まだかつての新聞業界の栄光の記憶が残っていた頃です。賃上げを張り合いに、勝ち組を目指し頑張ってくれるだろうと期待しました。

 

読者のみなさんは、すでに嫌な予感がしていると思います。

 

賃上げの発表会。いつまでも鳴り止まない拍手を浴び、私はヒーローになったような思いがしました。

 

日頃の労をねぎらうために、また、決起の機運を高めるために、懇親会までやりました。社員はみんな私にお酌に来てくれ、まあ、酔った勢いもありますが、熱い決意表明をしてくれるのです。

 

何人ともガッチリと握手を交わし、宴は終了。翌朝は、みんないつもよりも早く出社していました。私は「期待に応えてくれた」と嬉しくなりました。

 

3週間後、あの熱い決意表明をした人間は、別人だったんじゃないか? と疑うほどに、元に戻っていました。パラレルワールドにでも迷い込んだかのような困惑を覚えたのです。

 

ハーズバーグの理論は正しかったのです。当社が手にしたものは、「固定費増」だけでした。しかし、これは悲劇の序章に過ぎなかったのです。

 

この件を反省した私は、次の施策に乗り出しました。「やっぱり、単なる賃上げではダメだな。条件をつけるべきだ」と。

 

これにより、前述の企業の活力を奪う2つ目のケース……「間違った賃上げで、かえって社員のヤル気が低下してしまう」という事態が起きたのです。

 

無条件に賃上げするのではなく、貢献した者には、ドンと賞与を出すという施策です。貢献度合いにより、社員を5段階……S・A・B・C・Dで相対評価し、社員を競わせました。その結果、期待とは真逆の現象が起きたのです。

 

常に私の顔色をうかがい、言われたことを、失敗しないように、ただこなすだけの、自発性のない社員ばかりになってしまったのです。

 

評価にならない仕事を避けるようにもなりました。当然、創造的な仕事はできません。社員を競わせたことで、社員間の助け合いや学び合いも、ほぼ皆無になってしまったのです。

 

 

米澤 晋也

株式会社Tao and Knowledge代表

株式会社たくらみ屋代表

一般社団法人夢新聞協会理事長

 

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賃金が上がる! 指示ゼロ経営

賃金が上がる! 指示ゼロ経営

米澤晋也

内外出版社

【内容】 本書の目標はズバリ、<賃金が上がる>企業を増やすことです。 しかし、賃金が上がらない時代において、“安易な賃上げ”は、かえって社員のモチベーションや企業の稼ぐ力を低下させてしまいます。そうならないため…

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