グーグルのトリックは「グローバル経済の虫食い穴」
この種の抜け道は、一般市民にとって、とりわけ2回目のデートのために急いで身なりをととのえたい市民にとって、どうでもいい退屈な話に聞こえるかもしれない。
だが、このような手口を世界規模に拡張して眺め、いかに世界の富の仕組みの中心に位置しているかを理解すると、グーグルのトリックは抜け道というより、グローバル経済の虫食い穴(ワームホール)のようなもので、ここ数十年にわたって世界中の社会契約にじわじわと浸食し、しかも今後も止まる気配はないことがわかってくるのだ。
マルコがベルトをオンラインで購入すると、もし実店舗で購入していたら得られていたはずのオールイタリアンの取引の10%が消えてしまう。その金はいったんアイルランドに流れ、なくなり、また別の場所に流れて消えさる。
グーグルを経由して動いた何十億ドルもの取引の全貌を追うと、グローバル化した世界で企業の力の源泉はどこにあるのか、不平等をこれほど広げている原動力はなんなのかが見えてくる。
ベルト一本がオンラインで売れるごとにアスカーニがグーグルに支払う計算になる3.96ユーロを、グーグルが毎日配信している何十億件もの広告に当てはめると、グーグルの利益と、グーグルが事業を展開している国々での損失がどちらも莫大な額になることがわかる。
現在の税法は、物理的な世界で発生する商取引、すなわち有形財であることと、国境が存在することを前提としてつくられている。
だが、ビジネスがデジタル化され、世界全体という巨大なチェス盤の上で事業を展開するようになったいま、税法は実情に合っていない。エコノミストの推計によると、企業の納税回避のせいで、世界各国の政府は毎年5,000億ドル以上の税収を失っている。
さらに、富裕な個人も、多国籍企業が極めた手口と同じやり方で税金逃れに邁進する例が多く見られ、政府の損失はいっそう巨大化している。