地球温暖化による影響を気象庁が予測
現状でも、地球温暖化による自然災害は多発しているが、パリ協定の目標が達成されたとしても、さらに地球環境が悪化することは避けられない。では、どの程度の影響があるのだろうか?
これについて気象庁と文部科学省は2020年12月4日、日本の気候変動について、これまでに観測された事実や、今後の世界平均気温が2℃上昇シナリオおよび4℃上昇シナリオで推移した場合の将来予測を、「日本の気候変動2020」という報告書で公開した。
2℃上昇シナリオは、21世紀末の世界平均気温が、工業化以前と比べて0.9~2.3℃(20世紀末と比べて0.3~1.7℃)上昇する可能性の高いシナリオで、パリ協定の目標が達成された気候の状態に相当するという。
4℃上昇シナリオは、21世紀末の世界平均気温が、工業化以前と比べて3.2~5.4℃(20世紀末と比べて2.6~4.8℃)上昇する可能性の高いシナリオで、現時点(2020年当時)を超える追加的な緩和策をとらなかった気候の状態に相当するという。
それによると、2℃上昇シナリオでは、21世紀末の日本の年平均気温は約1.4℃上昇し、4℃上昇シナリオでは約4.5℃上昇するという。猛暑日の年間日数は2℃上昇シナリオでは約2.8日増加し、4℃上昇シナリオでは約19.1日増加すると予測。熱帯夜の年間日数はそれぞれ約9.0日、約40.6日増えるという。
降水量に関しては、1日あたり200mm以上の降水量の年間日数は、2℃上昇シナリオでは約1.5倍に増加し、4℃上昇シナリオでは、約2.3倍に増加するとしている。
日本沿岸の平均海面水位は、2℃上昇シナリオでは約0.39m上昇し、4℃上昇シナリオでは約0.71m上昇すると予測している。
気象庁と文部科学省が公表した「日本の気候変動2020」(詳細版)の中に、次のような記述がある。
「2015年に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、『世界的な平均気温上昇を工業化以前と比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する』という将来の気温上昇予測と対策の長期目標が示された。
これは、それまでに示されていた温室効果ガス排出量削減目標以上の排出削減努力を各国に求めるものであり、また、非常に大きな努力を行ったとしても1.5℃の気温上昇を避けるのは難しいということも暗に示していると言われている。」
つまり、世界の平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えるというのは、決して前向きな目標ではないということだ。カーボンニュートラルは、もはや努力目標ではなく、具体的な行動に移すべき喫緊の課題になっていることを認識すべきだろう。
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丸山 篤 (フリーランス)
大学卒業後、SI企業のSEを経て、1996年よりマイナビ。マイナビでは、PC月刊誌、書籍、マイナビニュースで編集を担当。マイナビニュースではエンタープライズチャンネル編集長、マーケティングチャンネル編集長、企業IT編集長、IT編集部長を務める。2023年4月にマイナビを退職し、フリー。現在、ASCII.jp、マイナビ TECH+などの記事を執筆。