(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年4月から、従業員1,000人超の企業について育児休業取得状況の公表が義務化されています。これは2022年4月から段階的に行われてきた「育児休業法」の改正法施行の総仕上げにあたるものです。現政権は「異次元の少子化対策」を掲げており、その本気度が問われています。本記事では、これまで1年かけて施行されてきた「育児休業法」の改正法の概要を振り返りながら、克服しなければならない課題を検証します。

残された課題と問題点

ここまでお伝えしてきた育児休業法の一連の改正法は、いずれも実効性が課題となっています。

 

その中身がきちんと実現されれば、育児休業の取得が促進され、男女問わず誰もが仕事と育児を無理なく両立でき、一定の効果が見込まれるはずです。

 

ところが、わが国の労働関係法制は、古くから、実効性確保が課題となってきました。「労働基準法」も「男女雇用機会均等法」も、中身は素晴らしいにもかかわらず、実効性が確保されておらず、部分的に骨抜きになっているといわざるをえません。

 

女性が出産したら、育児のため仕事を辞めなければならないとか、キャリア形成の妨げになるといった実態があることは否定できません。

 

また、男性の育児休業取得に対する社会の理解は遅々として進んでいません。2021年における女性の育児休業取得率が85.1%なのに対し、男性の育児休業取得率は13.97%にとどまっていることが物語っています(厚生労働省「令和3年(2021年)度雇用均等基本調査」)。

 

さらに、実質所得は上がらないにもかかわらず、税金や社会保険料の負担は増大し、物価も上昇しており、子育てをするには厳しい状況です。

 

このような状況で、若年層が「子どもを持たない」という選択肢をとることを誰が批判できるでしょうか。

 

旧態依然とした、半ば無自覚的な男尊女卑の風潮が一部に根強く蔓延っていることと相まって、日本社会の自浄作用が発揮されることは期待薄といわざるをえません。

 

これを劇的に改善するには、国が実効性確保のための制度を強化する以外にありません。

 

ところが、違反した事業者に対するペナルティーが軽度なものにとどまっています。具体的には以下の通りです。

 

【違反した事業者に対するペナルティー】

1. 労働局から助言・指導・勧告を受けたのに従わない場合は、企業名が公表される

2. 労働局長から実施状況につき報告を求められたのに対し、報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合は、20万円の過料が課される。

 

「氏名公表」は罰ですらありません。また、「過料」は講学上の「秩序罰」にすぎず、「刑罰」よりも著しく軽いものです。

 

いずれも、制裁としての実効性が乏しいといわざるを得ません。

 

「異次元の少子化対策」を実現するには、育児休業法等の法規制を守らないケースに対し刑罰も含めた強力なペナルティーを科すことも視野に入れ、実効性の確保にこそ本腰を入れることが求められます。

 

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