「死後は自然に還りたい」、「さまざまな事情でお墓に入れない」などの悩みを持つ人に、「散骨」という葬送方法は最適といえます。では、実際に散骨をする場合にはどのような事前準備が必要となるのでしょうか。本記事では、散骨するまでの流れと事前準備について海洋散骨事業を運営する株式会社ハウスボートクラブの赤羽真聡代表取締役社長が解説します。

「海洋散骨」とは?

海洋散骨は、祭祀の目的をもって、故人の火葬したあとの焼骨を海洋上に散布することをいいます(一般社団法人日本海洋散骨協会ガイドラインより)。

 

自分の死後は自然に還りたい、大好きだった海に眠りたい、といった故人の意志や、さまざまな事情でお墓に入れない、お墓を持てないという悩みをお持ちの方に最適な葬送方法とされています。海洋散骨の方法として、「船舶で行う方法」と「ヘリコプターやセスナ機で沖合いまで飛び、空から撒く方法」があります。

海洋散骨の前に…準備と確認すべきこと

事前相談・生前申込み

まず、海洋散骨を検討されているなら、信頼のできる事業者に相談しましょう。ホームページや取り寄せた資料の情報だけでなく、実際にスタッフの方の対応をみて判断することをおすすめいたします。

 

すぐに散骨をすることが決まっていなくても、生前から相談しておくことも可能です。実際にどのような場所で、どのように海洋散骨が行われるのか……事前に把握するために、散骨体験クルーズがおこなわれている海域で参加してみるのもよいでしょう。

 

申し込みに必要な書類

海洋散骨の申し込みは対象の方がご逝去されてからご火葬後に正式に書類を揃えて行います。

 

事業者の所定の申し込み用紙のほかに、「埋葬許可証」のコピーが必要になります。「埋葬許可証」とは、自治体が発行する「火葬許可証」に、火葬場の火葬証明の印鑑が押されたもので、焼骨を墓地に埋葬する際に必要となる書類です。

 

墓埋法第14条『許可証のない埋葬等の禁止』では、「墓地の管理者や納骨堂の管理者に対し、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理しなければ遺骨を埋葬、収蔵してはならない」と規定しています。現在のところ、散骨業者に対する許可証受理の規定はありませんが、お預かりするご遺骨が事件性がないことを証明する書類として、提示が必要になります。

 

葬儀後に埋葬をしないで散骨する場合

「埋葬許可証」は、火葬場で納骨後に発行され、ほとんどの場合は骨壺と一緒に収納されています。墓地に埋葬する場合は、許可証を管理者に提出しますが、散骨の場合は提出の義務はなく、複写を提出する場合がほとんどです。

 

すべてのお骨を散骨せず、分骨して一部を散骨、一部を納骨する場合は、埋葬許可証の原本が必要になりますので、遺すお骨と一緒に保管しておきましょう。

 

お墓に埋葬している遺骨を取り出して散骨する場合

長くお墓に埋葬されているお骨は、埋葬許可証が保管されていないことも多いです。遺骨を墓地から取り出して、別の墓地あるいは納骨堂に移動する際は、「改葬許可証」が必要になります。

 

「埋葬許可証」が存在しない場合、「改葬許可証」がその代わりの書類として有効ですが、すべてを散骨する場合は、自治体で「改葬許可証」が発行されないケースもありますので、その場合は、墓地の管理者に「遺骨引き渡し証明書」を発行してもらいましょう。

 

埋葬されているお骨の関係性が明らかでない場合は、「除籍謄本」などの書類が必要になる場合もあります。詳しくは事業者に相談しましょう。

 

なお、お墓に埋葬されている遺骨を取り出して散骨する場合は、書類の手続きに時間がかかることと、お骨が水分を含んでいたり、土と混じっていることが多く、洗浄・乾燥のプロセスが必要となりますので、あらかじめ余裕をもったスケジュールで申し込みましょう。

 

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