知らないと大損!「申告誤り」多発で税務署が目を光らせる…自分と家族にかかわる「6つの所得控除」【元国税専門官が解説】

知らないと大損!「申告誤り」多発で税務署が目を光らせる…自分と家族にかかわる「6つの所得控除」【元国税専門官が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマンの給料や退職金は上がらず、その反面、税金や社会保険料等の負担は増大しています。今やサラリーマンにとって、自衛手段として能動的に「節税」することが欠かせません。本記事では元国税専門官である小林義崇氏が、新刊著書『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』(PHP研究所)から、サラリーマンが利用できる「人」に着目した「所得控除」の制度について解説します。

配偶者控除

結婚をしてパートナーを扶養に入れると、配偶者控除もしくは配偶者特別控除を使える可能性があります。

 

この2つの所得控除も、所得金額が影響するタイプの控除です。基礎控除と違うのは、本人だけでなく配偶者の所得も条件になる点です。

 

配偶者控除と配偶者特別控除の理解が難しいのは、本人と配偶者という2人の登場人物がいるため、どちらの説明なのかを混乱してしまう点にあります。

 

そこで、「サラリーマンの夫」と「専業主婦の妻」という設定で説明を進めていきます。妻が夫を扶養するケースもあると思いますので、その場合は説明の主語を読み替えてください。

 

まず配偶者控除について説明します。

 

配偶者控除は、夫の合計所得金額が1,000万円以下、妻の合計所得金額が48万円以下の場合に使えます。

 

夫の合計所得金額が900万円を超えると、段階的に配偶者控除の額が減り、1,000万円超でゼロになる形です。

 

なお、扶養されている配偶者がその年の12月31日時点で70歳以上であれば、老人控除対象配偶者という扱いになり控除額が加算されます。

 

注:老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人
[図表3]配偶者控除 注:老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人

 

先ほど基礎控除のところで「103万円の壁」という言葉を説明しましたが、この言葉が配偶者控除に関連して使われることがあります。

 

たとえば妻がパートを始めて、給与収入が103万円を超えたとしましょう。すると、給与所得控除55万円を引いても48万円を超えてしまい、配偶者控除の対象から外れてしまいます。

 

そのため、「配偶者が年収103万円を超えると配偶者控除が使えない」→「103万円の壁」と言われているのです。

配偶者特別控除

妻の合計所得金額が48万円を超えると配偶者控除が使えなくなりますが、すぐに夫の税金に影響が出るわけではありません。配偶者控除の代わりに、配偶者特別控除が適用されるからです。

 

配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額に応じて控除額が減っていくしくみになっています。

 

[図表4]配偶者特別控除

 

ここでまず押さえておきたいのが、本人の合計所得が900万円以下で、配偶者の合計所得が95万円以下であれば、配偶者控除と配偶者特別控除の節税効果に違いはないという点です(いずれも控除額は38万円で同じ)。

 

つまり、実際に控除額が減り始めるのは、妻の合計所得が95万円(給与収入に換算すると150万円)を超えてからなのです。

 

この収入を超えると、控除額が減り、夫の税金が増えていきます。夫の税金への影響が出ないようにする意味では、「103万円の壁」ではなく、「150万円の壁」のほうが実情と合っています。

 

配偶者控除や配偶者特別控除に関する申告誤りはよく起きており、税務署もチェックしています。年末調整や確定申告のときに配偶者の収入金額を低く見積もった結果、本来は使えない控除を申請してしまうことが起きがちなのです。

 

夫婦とはいえ、お互いの収入を正確に把握している人は少数派かもしれません。

 

しかし、少なくとも配偶者控除や配偶者特別控除の判定に必要な情報は共有しておく必要があります。もし誤った形で配偶者控除や配偶者特別控除を利用していたら、税務署に後から指摘されます。場合によっては追徴税がかかる可能性があるので注意してください。

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会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて

会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて

小林 義崇

PHP研究所

自動的に適用される節税の制度が次々と廃止され、 任意で使える節税の制度が増えている。 だからこそ、知識の違いで税金の負担に大きな差が出る! 2022年度の租税負担率と社会保障負担率を合わせた国民負担率は5割近くに上…

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