(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年2月3日、政府は、児童手当の「所得制限」を撤廃する方向で調整に入りました。しかし、それに先立ち、西村経済産業大臣が、衆院予算委員会において所得制限の撤廃に否定的な意見を述べたことが物議を醸しています。本記事では、西村経産相の発言内容から浮かび上がる問題点を解説します。

西村経産相の発言の問題点

以上を踏まえ、西村大臣の発言の問題点を検証します。

 

◆問題点1|児童手当や他の法制度に対する理解が欠けている

第一に、西村経産相の発言は、児童手当の存在意義自体を否定し、かつ、既存の他の法制度の枠組みを踏まえないものといわざるを得ません。

 

すなわち、まず、児童手当の法的根拠である「子ども・子育て支援法」の第1条には以下のように明記されています。

 

【子ども・子育て支援法 第1条】

「この法律は、(中略)子ども及び子どもを養育している者に必要な支援を行い、もって一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的とする。」

 

この条文からわかる通り、児童手当の趣旨目的はすべての子どもおよびその親を対象とする「子育て支援」にあります。これは所得の大小に関係なくすべての世帯に等しくあてはまるものであり、所得制限はこの趣旨に反している疑いがあります。

 

また、西村氏は「厳しい状況にある人を上乗せや別の形で支援すべき」といいます。しかし、「低所得世帯」のための「上乗せ」等を行う制度としては、学用品等の購入費用を支援する「就学援助」等の制度や、高校・大学の「学費無償化」の制度があります(決してこれらが十分だという趣旨で紹介しているわけではありません)。

 

「所得の再分配」や「格差解消」「救貧」の問題は、「児童手当」とは区別して対処すべきであるということです。

 

特筆すべきは、西村氏が「限られた財源」を強調していることです。すなわち、これ以上財源を増やすことは難しいといっているのです。

 

その前提の下で「高所得者に配る」ことを否定し、今以上に「厳しい状況にある人を上乗せや別の形で支援」するのであれば、そもそも「所得制限」以前に児童手当の制度自体を廃止し、その分を低所得世帯に回す以外に有効な方法はないということになります。

 

西村氏は、果たして、そこまで考慮したうえで発言を行ったのでしょうか。

 

◆問題点2|現行制度の不公平・不合理の問題を覆い隠してしまうおそれがある

第二に、西村氏の発言は、現行の所得制限の制度が抱えている「不公平・不平等」の問題を糊塗してしまうおそれがあります。

 

すなわち、現行の児童手当の所得制限は「世帯」ではなく「世帯主」の所得金額を基準としており、それに対して不公平・不合理だとの批判があります。

 

以下の2つのケースを比較してみましょう。

 

・ケース1:世帯主の年収が1,200万円の「ひとり親」世帯

・ケース2:世帯主と配偶者の年収が900万円ずつの共働き世帯(世帯年収1,800万円)

 

「ケース1」では世帯主の年収が1,200万円なので「所得制限限度額」も「所得制限上限額」も超えており、児童手当を受け取れず、月5,000円の「特例給付」も対象外です。

 

これに対し、「ケース2」は世帯主の年収が900万円なので「所得制限限度額」内であり、児童手当を2名分(月額合計2万円)受け取ることができます。

 

「ケース2」の世帯の方がケース1の世帯よりも世帯年収が高いにもかかわらず、ケース1では児童手当を1円も受け取れず、ケース2では2万円を受け取れるという事態が出来しています。これは明らかに不平等です。

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