(※写真はイメージです/PIXTA)

受け取ることのない保険金のために、保険料を払い続ける。基本的には損をするのに、宝くじを購入する…。私たちが時折「経済的には損をするのに、なぜやった?」という非合理的な行動をとってしまうのは、どうしてでしょうか。太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋し、そのヒントとなる「行動経済学の代表的なアイデア」を紹介します。

 

<クイズ2>

次はこの手の質問で世界一有名な女性の登場です。

 

「リンダは31歳の独身女性。社交的で聡明(そうめい)で、学生時代は哲学を専攻して差別の問題に高い関心を持っていた」
 

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【質問】リンダは次のどちらに該当する確率が高いでしょうか?

A…リンダは銀行員だ

B…リンダは慈善(じぜん)活動に積極的な銀行員だ

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正解はAです。単純に確率だけで考えれば、「リンダが銀行員であり、かつ、慈善活動に積極的である」確率は、単に「リンダが銀行員である」確率より小さいからです。

 

類似の質問で実験をした行動経済学者・カーネマン氏たちによると、Bを選ぶ人が多かったというのですが、みなさんはどうだったでしょうか。

 

ここで試されているのは、「物事のもっともらしい一面を捉(とら)えて、印象だけで推論を誤ってしまわないか」ということです。

 

Bを選んだとすれば、「哲学好きで差別問題に関心が高ければ、慈善活動にも興味の強い人」というストーリーを勝手につくり上げて冷静な推論を怠(おこた)ったわけです。

 

こうした、心の中で期待するストーリーに引っ張られることを「代表性バイアス」と呼びます。

 

<クイズ3>

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まずは、好きな数字を思い浮かべてください。

 

奇数を思い浮かべたのなら質問1と2を、偶数を思い浮かべたのなら質問3と4を読んで回答してください(可能であれば、読まなかったほうの質問を近くの誰かに見せて回答を比較してください)。

 

●奇数を思い浮かべた人はこちら↓

【質問1】私(筆者)の月給は20万円より低いでしょうか?

【質問2】国連加盟しているアフリカの国の数はいくつでしょうか?

 

●偶数を思い浮かべた人はこちら↓

【質問3】私(筆者)の月給は100万円より高いでしょうか?

【質問4】国連加盟しているアフリカの国の数はいくつでしょうか?

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給与の話はさておいて、2021年3月時点でアフリカの54ヵ国が国連に加盟しています。

 

さて、あなたの回答は給与の金額に引きずられていないでしょうか? 一般的に、質問2を答えた人は、質問4を答えた人より国の数を少なく見積もることが知られています。

 

仮にあなたの回答も引きずられていたとすると、そうした効果を「アンカリング」と呼びます。目に映った他の情報や、頭の中に残った情報に推論が歪められる効果を指した言葉です。

 

これの恐ろしいところは、私の月給がいくらかどうかは、国連加盟するアフリカの国数とは全く関係がない点にあります。つまり、もし、推論を引っ張られていたとしたら、なんでもかんでも情報に飛びついて無関係のものにまで、あなたの認知や判断が影響を受けているということになります。

 

いったん休憩して、話を整理しておきましょう。ここまでのどこかのクイズで不正解を出したり、推論を大きく歪めてしまっていたとしたら、マズかったことはなんでしょうか?

 

おそらく、その間違った情報処理を行なったのは脳のシステム1です。しかし、あなたの脳のシステム2が、それを統制できなかった点も問題と言えます。

 

いずれのバイアスにも関係しているのは、ヒトの認知や判断が、“目に見えたものがすべてとばかりに、結論を急ごうとする傾向にある”という点です。

 

印象的で記憶に残る情報や、目立つ情報に吸い寄せられるというわけです。結果、コンテクストに依存した意思決定にもつながってしまいます。

次ページクイズ4

※本連載は、太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

太宰 北斗

ワニブックス

「税抜価格を表示したら売上が上がる!?」 「経済学を学ぶと所得が上がる!?」 「競馬で賭けるなら“本命” “大穴”は外すべき!」 「3割バッターが最終試合を休む理由とは?」etc. “リアルに得する経済学”をおもしろい…

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