(※写真はイメージです/PIXTA)

メンタル不調の原因は、明らかなストレスだけではなく、日々の何気ない習慣や行動であることも少なくありません。メンタルにいい習慣・悪い習慣を知り、メンタルを整えて回復する方法を押さえましょう。YouTubeを始めとする各種SNSで情報発信を行うメンタルドクターSidow(紫藤佑介)氏が解説します。

メンタル不調の原因は“明らかなストレス”だけではない

コロナウイルス感染が流行して2年を超え、多くの人の行動パターンや生活様式が変わり、メンタルの不調を訴える方も増えています。2022年の厚生労働省の調査によると、この1年間でコロナ禍により心の健康が悪化した、と回答した人の割合は22.3%にのぼり、メンタルヘルスに注意を向ける必要がより高まっていると言えます。

 

メンタルが不調になる原因は自分自身で気づける明らかなストレスだけではなく、日々の習慣や行動によることも多いです。ですから、あらかじめメンタルを整え回復する方法を知っておくことは、知らない間にメンタル不調に陥るのを防ぐのに役立ちます。

 

今回は、日々の生活で実践可能な「メンタルにいい習慣」と「悪い習慣」について、朝・昼・夜のシチュエーションに分けて見ていきたいと思います。

朝の習慣:決まった時間に起き、日の光を浴びる

朝は1日の始まりなので、その日のパフォーマンスを決めるのに非常に大事な時間帯です。その中で特に意識してもらいたい2つの習慣が「決まった時間に起床する」と「日の光を浴びる」です。

 

決まった時間に起床することで生活のリズムが整うため、1日のパフォーマンス向上にもつながります。休日や始業が遅い日につい遅くまで寝てしまう方もいると思いますが、そうすると体内時計にズレが生じて「社会的時差ボケ」という状態になります。休み明けの仕事での集中力低下や眠気につながることもあるため、できるだけ休みの日も決まった時間に起床するようにしましょう。もし日中に眠気を感じるようなら30分以内の仮眠をとるか、夜はいつもよりも早めに寝ることで調整し、起床時間自体はなるべく変えないようにしましょう。

 

また、起床と同時に日の光を浴びるようにすると、体内時計がリセットされると同時にセロトニン(ストレスを緩和する神経伝達物質)の分泌が促進されます。さらにセロトニンはメラトニン(睡眠を促すホルモン)の原料になるため、起床時に光を浴びることは夜の良質な睡眠にもつながります。ストレス緩和と睡眠リズムの安定両方に直結するので、「決まった時間に起床する」と「日の光を浴びる」はできるだけセットで実践するようにしましょう。

昼の習慣:なるべく歩く

昼は仕事の時間という方が多いと思いますが、最近はリモートワークの普及もあって職場ではなく自宅で仕事をしている人も多く見られます。

 

リモートの有無に関わらず会社勤めの方に勧めたい日中の習慣は「なるべく歩く」です。デスクワークやリモートワークだとどうしても椅子に座っている時間が長くなりますが、通勤時間や休憩時間の合間などでなるべく歩く瞬間を取り入れましょう。歩行は血液やリンパの循環を改善するので脳や体がスッキリしますし、歩行によるリズム運動によって先ほど説明したセロトニンの分泌も促進されます。

 

逆に言えば1日の中でほとんど歩かない生活はメンタルに悪い習慣に当たるため、普段の生活の中ではできるだけ階段を使う、一駅分なら歩く、などを心がけるようにしましょう。

夜の習慣:貴重な自由時間でも「~し過ぎ」は禁物

仕事や学校が終わり、帰宅して寝るまでの夜の時間帯で重要なキーワードは「適度」です。

 

夜は仕事以外でまとまった時間を確保できる唯一のチャンス、という方も多いのでついつい色々とやりたくなってしまうのは分かります。外食して食べ過ぎたり、お酒を飲み過ぎたり、夜更かしをし過ぎたり…。ただ、こういった「~し過ぎ」はほとんどが悪い習慣に当たると言っていいでしょう。たとえば過食は生活習慣病のリスクに、過剰な飲酒は依存症のリスクに、夜更かしは不眠のリスクに、などです。

 

基本的に人間の体内時計は外が暗くなるにつれて副交感神経が優位になってリラックスする体制に向かいます。特に寝る1~2時間前は睡眠導入に非常に重要な時間帯なので、この間にはすべての行動を控えめに行うようにしましょう。食事を摂り過ぎない、お酒を飲み過ぎない、スマホを触り過ぎない。こういった習慣を続けることがメンタルの不調を防ぐために重要になってきます。

まとめ:日々の行動・習慣は侮れない

以上、朝・昼・夜別にメンタルを良くするために取り入れたい習慣について解説しました。

 

メンタルの不調は誰でも抱える可能性がありますが、実際は本人に自覚がないことも多いです。なぜか疲れが取れない、朝スッキリ起きられない、集中力が持たないなどの兆候は、身体からではなくメンタル不調から来ていることもあるため、特に健康的なときの自分との差には敏感に気づくようにしましょう。

 

普段から先ほど解説したような習慣を続けることも大切ですが、もし続けるのが難しい、不調が長時間続いている、ということであれば精神科や心療内科の受診も考えましょう。病院を受診することで自分では気づけない体調の変化に気づいたり、客観的なアドバイスを受けたりできます。

 

 

メンタルドクターSidow(紫藤 佑介)

精神科専門医、医学博士

 

1987年東京都生まれ。東邦大学医学部卒。東京都内の病院で精神科医として働きながら、SNSで精神科の様々な情報を発信するYouTuberとしても活躍中。YouTubeのチャンネル登録者は9万人を超える(2022年9月現在)。世の中の精神疾患に対する誤解や偏見を解消したいという思いから、精神科に関するわかりやすい情報を発信しつづけ、YouTubeが注目するクリエイター「YouTube NextUp 2019」の日本代表にも選出された。

 

<著書>

『もし世の中から面倒な人がひとりもいなくなったとしたら 面倒な人・苦手な人のトリセツ』(アスコム)

『精神科医が教える 疲れた心をスーッとほぐす方法 焦り、心配、イライラがみるみる消える』(KADOKAWA)

『メンタルドクターSidowが教える人間関係も仕事も「しんどいこと」をリセットする方法』(大和書房)