(※画像はイメージです/PIXTA)

筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきかを記しています。発達障がいは治療ができない難病ではありません。本記事では、発達障がいを抱える子をはじめ、子どもへ「睡眠が与える影響」について解説していきます。

「REM睡眠とNREM睡眠」周期的に訪れさせるには…

睡眠中は、このREM睡眠とNREM睡眠が周期的に現れます。簡単に2つの睡眠の役割を説明すれば、REM睡眠時に、記憶の固定や消去、学習や身体的な睡眠が行われ、NREM睡眠時に成長ホルモンの分泌や大脳の睡眠が行われます。

 

つまり、どちらも必要なものであり、この2つの睡眠が十分に行われなければならないのです。

 

[図表3]遅寝遅起きと生活習慣病あるいはキレる子どもとの関係図(環境要因)

 

夜更かしなどでこの睡眠のリズムが乱れます。NREM睡眠は、お子さんの睡眠時間の前半に、REM睡眠は後半に集中しています。そのため、夜更かしをすると、前半のNREM睡眠は確保できるのですが、REM睡眠が中途半端に終わってしまいます。

 

REM睡眠の役割が果たせないので、記憶の定着もしにくく、睡眠(冬眠)中に無理やり起こされるわけですから、朝は当然、低体温となり、身体的な準備ができないまま活動を強いられるため、やる気もでませんし、内臓を含む体のあらゆる器官にも負担がかかってしまいます。

 

また、体や脳が十分に休まらず時差ボケのような状態になりやすく、お子さんは衝動的な行動や攻撃的な行動が多くなります。特に発達障がいを抱えたお子さんは、ADHDの併存で衝動的な行動をしやすい傾向にあります。

 

睡眠のリズムが乱れることによってより一層、それらの問題行動を起こすことが増えてしまうのです。だからこそ、発達障がいのお子さんの場合は特に、睡眠に気を遣ってあげることが大切になります。

 

このREM睡眠とNREM睡眠が周期的に訪れるようにするためには、サーカディアンリズムを守ることが大切です。サーカは「およそ」、ディアンは「1日」という意味のラテン語で、「概日リズム」という意味です。

 

サーカディアンリズムとは「睡眠・覚醒リズム」のことです。このリズムに大きく関わってくるのが、メラトニンという催眠・生体リズムの調節作用のあるホルモンです。このホルモンは眠くなると、脳の松果体というところから分泌されます。睡魔の元となるホルモンです。

 

時差ボケを予防するのにパイロットやスチュワーデスなどは、メラトニンサプリメントを服用して時差を調節することがありますし、睡眠障がいの患者さんが服用することもあります。

 

朝起きた時に外の光を浴びることで、視交叉上核にある体内時計のスイッチがリセットされ、15時間後にはメラトニンにより睡魔が襲ってくるというリズムが我々人間には備わっています。

 

しかし、目に光が入ることでメラトニンは抑制されます。人間は光を浴びて睡魔から逃れているのです。夜、眠かったはずなのに、テレビを見ていたら眠れなくなるという経験は、テレビの光によって、メラトニンが抑制されるために起こるものなのです。

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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