(※写真はイメージです。/PIXTA)

「自分(や家族)はひょっとして認知症ではないか?」…真剣にそう自覚していくのは怖いものですが、認知症は早期発見、早期治療、そして早期の効果的な対応によって、その後の人生が良くも悪くもなる病気です。認知症研究の第一人者・浦上克哉氏が監修した『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)より、早期発見のヒントとして、「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いを見ていきましょう。

「思い出せない」だけか、「記憶そのものがない」のか

「もの忘れ」とは、短期的な記憶のいくつかが抜け落ちてしまうことです。記憶の「ある部分」が抜けるだけですから、記憶そのものが抜け落ちてしまう認知症とは根本的に違います。たとえば、「あの人の顔は思い出せるけど、名前が出てこない…」というのは単なるもの忘れですから大きな心配はいりません。

 

ここで、記憶というもののしくみを簡単に説明しましょう。

 

記憶には、①「記銘」②「保持」③「再生」の3つの段階があります。そして、物事を認識して記憶していく〈貯金〉は、脳の側頭葉の内側にある「()馬(かいば)()」に知識として蓄積されていきます。つまり、海馬が記憶の貯金箱なのです。私たちは、毎日の暮らしの中で受け取る膨大な情報をこの貯金箱にため(記銘)、知識として植え付け(保持)、必要なときに必要な情報を取り出しながら(再生)、生活しています。

 

ところが老化が進んでいくと、記憶の貯金箱から的確な情報をすぐに取り出せなくなります。再生がうまくいかず、貯金箱からどの情報を引っ張り出せばよいのか分からなくなってしまうのです。これが、「思い出せない…」という健忘症の症状です。

 

一方、認知症の場合は、記憶の貯金箱である海馬に障害が生じてしまい、そもそも記憶を保持できません。思い出せないのではなく、「すっかり忘れている」のが認知症なのです。

 

「最近、もの忘れが多いな…」と感じても、安易に認知症に結びつける必要はありません。そしてもの忘れと認知症の違いは、日常生活の様々な状況で感じることができます。

 

浦上克也著『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)より
[図表2]記憶の貯金箱である「海馬」に障害が生じて記憶が抜け落ちる… 浦上克也著『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本』(徳間書店)より

老化か認知症か…日常生活で現れる「それぞれの特徴」

老化によるもの忘れは、「健忘症(けんぼうしょう)」ともいわれます。健忘症と認知症の違いは、前述したように「生活に支障が生じるようなもの忘れかどうか」という点でも判断できます。

 

もの忘れは加齢によって脳細胞の働きが鈍くなるものですから、誰にでも起こり得るものです。また単なるもの忘れは、ストレスや睡眠不足、過労などによっても生じ、「うっかり」「度忘れ」といった言葉でも表現されます。つまり、日常生活にそれほど大きな影響を与えるものではないのです。半面、家族など周りの人に影響をおよぼしてしまう行動が繰り返し見られるようなら、認知症を疑ってみる必要があるかもしれません。

 

では具体的に、普段の生活でのどのようなシチュエーションで、健忘症と認知症の違いは出てくるのでしょうか。図表3の特徴の違いを見て、あなたの「不安」がどのように該当するかを考えてみてください。

 

政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」より抜粋・改変
[図表3]老化によるもの忘れの特徴&認知症によるもの忘れの特徴 政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」より抜粋・改変
次ページ「生活に支障をきたすか、否か」の分かれ目は?

※本連載は、浦上克哉氏監修の『すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!』(徳間書店)より一部を抜粋し、再編集したものです。

すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!

すぐに忘れてしまう自分が怖くなったら読む本 認知症を予防・克服する新習慣!

浦上 克哉 監修

徳間書店

【認知症研究 第一人者、浦上克哉氏の最新メソッド!】 「ひょっとして認知症?」…あなたや家族が不安になったら読む本。 早期発見チェックリストで今の状態とやるべきことがよくわかる! 自分自身や家族の認知症が…

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