首都圏と地方の収入格差は最大で2割ほど地方のほうが低いデータがあります。しかし、Uターン転職した人は「今の年収に満足しているか」を見ると、半数以上の人が「満足」と答えています。そこには減収が必ずしも生活の質の低下には直結しないということがあります。キャリアコンサルタントの江口勝彦氏が解説します。

転職直後の年収で企業選びをしてはいけない

■年収は中期スパンで急増する事例が多数

 

都会と地方で中小企業の給与体系を比較すると、地方のほうが全体的に低く設定されています。そのため、Uターン転職直後は100万~200万円程度の年収ダウンは想定内です。しかし5年ほど経つと給与がジャンプするように上がり、都会と同程度あるいはそれ以上の水準になる事例がかなりの割合であります。

 

なぜスタート年収が低くなってしまうかというと、地方の中小企業では周りと足並みをそろえて悪目立ちしないというのが、その組織で円満に生きていくための処世術として重んじられる風潮にあるからです。

 

新しい人材を雇うとき、その人の給料をいくらにするかは経営者の裁量ですが、長年自社で働いてくれている社員の手前、その社員より高くはできないという事情が働きます。給与の額というのはその人物に対する会社(=経営者)の評価なので、会社への貢献度からすれば当然長年の実績のある社員のほうを評価するべきで、新たな人材を特別待遇で迎えることは軋轢を生みます。

 

求人票に明記された給与額を見たり、会計事務担当者から「中途採用された新人がいくらもらっている」などの話が漏れたりすれば、すぐにその人材はやっかみの対象になり、会社にもいづらくなるかもしれません。

 

そのような配慮もあって、ベテラン社員が650万円もらっているならUターン人材は期待値を込めても500万円あたりが妥当なラインとなります。

 

ただし、Uターン人材は都会で鍛えられているぶん能力のある人たちが多いので、そのうち仕事で成果を出し社内でも実力が認められていきます。「やっぱり都会から来た人は違うね」「社長は良い人材を見つけてきたね」となれば、経営者も公明正大に昇進や昇給ができます。ですから、Uターン転職で年収が下がることは決して悲劇ではなく、誰もが通る関門だと思っておくべきです。

 

その証拠に、都内の有名私立大学を出て、都内の大手不動産会社に勤め、年収800万円以上もらっていた30歳の男性がUターン転職し、400万円ほどに大幅減収した例がありました。彼には年収よりも大事にしたいものがあったので減収はもちろん納得のうえでした。先日、彼に8年ぶりに会って近況を尋ねてみたら、転職した会社の子会社を任されて社長になっていました。

 

こんなふうに、力のある人は都会だろうと地方だろうと人望を集めて活躍し、要職にステップアップしていくものです。

 

だからこそ、転職直後の年収の額面だけで職選びをするのはもったいないと思います。
 

 

江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント

 

 

本連載は江口勝彦氏の著書『幸せのUターン転職』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再編集したものです。

幸せのUターン転職

幸せのUターン転職

江口 勝彦

幻冬舎メディアコンサルティング

30代になると結婚や子どもの誕生、マイホームの購入、親の介護などさまざまなライフイベントを迎えます。 そのタイミングで都会からのUターン転職を考える人もいますが、年収やキャリア形成の不安から「自分が働ける場所はな…

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