(※写真はイメージです/PIXTA)

年々深刻化する地球環境。私たちがすべき第一歩は「知ること」かもしれません。今回は絶滅が心配される「トラ」の保護の実態をみていきます。

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    タイ…記録のなかったメスが確認、新たな希望に

     

    インドシナ半島には亜熱帯の季節林などの環境に生息する亜種インドシナトラが分布しています。しかし、過去20年ほどの間に、ベトナム、ラオス、カンボジアではほぼ絶滅。その中でタイは、インドシナトラにとって最大の希望の地となっています。

     

    ここ数年の個体数は横ばいで、増加に転じさせる取り組みが各地で行なわれていますが、2021年には明るいニュースが飛び込んできました。

     

    タイ西部のメーウォン国立公園で続けているカメラトラップ調査で、これまで記録のなかったメスが確認されたのです。その縞模様から個体を照合した結果、隣接するフワイ・カーケーン野生生物保護区で生まれた個体であることが分かりました。

     

    このような分布拡大の様子を確認できたことは、タイのトラの増加に期待を持たせてくれます。

    スマート・パトロールとは?

     

    最近「スマートOO」という言葉をよく聞くようになりました。それは保全活動も例外ではなく、SMARTパトロール*2というパトロール手法が世界60ヵ国で取り入れられています。

     

    これは、パトロール中に発見した罠や違法活動、野生動物やその足跡などをその場でモバイル機器に入力すると、そのデータが集約されてパソコンなどで確認したり、分析したりできるシステムです。

     

    ネパールでも6つの国立公園など2013年に導入されて以降、罠の発見率が3分の1に減少した一方、野生動物との遭遇率は数倍に跳ね上がりました*3。ネパールは、トラの生息域が少数の国立公園にほぼ限られている厳しい状況にあります。

     

    しかし、その保護区のパトロールには力が入れられており、密猟や密輸の抑え込みにも、ここ数年成功し続けています。新たな調査やパトロールの方法の導入によって、この成果が今後も継続されることが期待されます。

     

    *2: SMART = Spatial Monitoring and Reporting Tool

    *3:遭遇率は様々な要因が影響するので、パトロールだけの成果とは言い切れません

    ロシア…「ヒョウの森国立公園」でトラの数が3倍に!

     

    「ヒョウの森国立公園」は、極東ロシアの沿海地方に、WWFロシアなどの協力によって設立された保護区です。2012年にこの国立公園が設立された当時、ここで確認されたシベリアトラは10頭に過ぎませんでした。

     

    それがこの10年で、3倍の30頭に増えました。これは、密猟や樹木の違法伐採を防ぐために続けられてきた、レンジャーたちによる懸命なパトロールの賜物です。

     

    これだけ短い期間にこれだけの成果が得られたことは、驚きであると同時に、トラには高い回復力が備わっていることを示すものです。

     

    極東ロシアでは近年、他の地域でもシベリアトラの個体数が回復傾向にあります。今後はその生息域をより広く確保し、人との遭遇事故などを起こさないようにしながら、守っていく取り組みが必要とされています。

     

    「ヒョウの森国立公園」で撮影されたメス
    「ヒョウの森国立公園」で撮影されたメス
    (C)naturepl.com / Sergey Gorshkov / WWF

    ベトナム…24頭のトラを保護

     

    ベトナムは20世紀まで、インドシナトラの重要な生息国の一つでしたが、2000年以降、全土の開発や密猟により、現在ではトラが絶滅してしまいました。ところがそのベトナム北部のゲアン省で、2021年8月、24頭のトラが保護されました。

     

    これらのトラは、伝統薬の材料となる骨や、毛皮などを取るために、人の手で飼育していた個体を繁殖させたものと考えられています。もちろん、希少種であるトラの飼育や、その骨などを売買することは、ベトナムの国内でも違法行為。かも、こうした違法な行為は、トラの骨などに対する需要の増加を呼び、結果として野生のトラを密猟の脅威にさらすことにつながるのです。

     

    飼育されていたトラであっても、このような取引を見過ごすわけにはいきません。

     

    保護されたトラ
    保護されたトラ
    (C)Lam Anh

     

    ****************

     

    トラが生息している国の人々の多くは、トラがいることを誇りに思い、文化的な象徴としてとても大切にしています。

     

    また、多くの草食動物や、縄張りとなる広い自然を必要とするトラは、豊かな森があることを示す指標にもなります。

     

    トラの数が回復し、自由に闊歩する森を守り、広げていくことができれば、それはより多くの野生生物を含めた、豊かな自然を守ることにつながるのです。

    ※本記事は公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の発表資料を一部抜粋・編集したものです。

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