30代で地方転職を考える人が増えています。従来の50代以上の地方移住は大半が退職後のセカンドライフを想定しているものと考えられますが、40代以下では転居先でも働くことが前提となります。若い世代で都会を離れて地方へ転職したい人が増えているのはなぜでしょうか。キャリアコンサルタントの江口勝彦氏が解説します。

都会で子育てか、故郷に帰って子育てか

そしてこのタイミングで多くの人がこのまま都会で子育てするか、故郷に帰って子育てするかの選択を考えることになります。都会と地方の比較では、主に次のような項目が検討事項として挙げられます。

 

・教育環境としてどちらが良いか

都会は大人が暮らすには便利で良いのですが、子どもの成育環境の観点で見たときにやや不安が残るという意見が多いです。その理由としては、都会は地方と比較すれば緑が少なく子どもを安全に遊ばせられる公園や山や海などの自然環境なども限られることが指摘されます。

 

・都会なら私立受験、地方なら公立進学

また大都市圏は私立の小学校に進学する子どもが多く、そのため早いうちから受験勉強をすることになります。これに対して地方は私立小学校のない地域や少ない地域が多く、公立の小学校に進学するのが一般的です。

 

中学・高校への進学についても地方と都会は事情が違います。都会では進学率の良いトップ校は私立に多いですが、地方では公立がトップ校である場合が多いのです。そのため地方育ちの人たちは私立への受験に違和感や抵抗感を抱きがちです。

 

・夫婦だけで子育てが可能か

今は共働きの夫婦が多く、自分たちだけで子育てすることに不安や大変さを感じる場面も多くなっています。育児休業や産前産後休業の制度も日本ではまだ十分ではありません。男性が取得しにくい風潮があることはもちろん、女性も取得によってキャリアが切れてしまい復職がスムーズにいかないなどの問題が散見されます。ベビーシッターや保育所、預かり保育などを利用したとしても、月に何万円も費用が掛かります。

 

共働きの30代夫婦の多くはお互いに働き盛りです。そうしたなかで子どもが熱を出した、ケガをしたとなれば、夫婦のどちらかが仕事を途中で抜けたり休んだりして対応しなければなりません。どちらが休むかでケンカになることもあれば、共働きをやめて専業主婦(主夫)になるかを悩むこともあります。

 

妻が「なんで当たり前のように、いつも私が会社を休むことになってるの? 私たち二人の子どもでしょ?」と不満をこぼすと、夫は会社が忙しいからと言い訳をして、妻が「私だって責任のある仕事をしているの! 忙しいのはお互い様でしょ!」と大爆発するというのは共働き夫婦においてよくある一例です。

 

・マイホームをどこに構えるか

子育てに加えて、マイホームをどこに構えるかということも30代の多くの人が直面する問題です。都会は家賃や駐車場代なども高く、交際費やレジャー費なども地方より多く掛かる傾向にあり、都会暮らしのマイナス点を感じやすくなります。

 

このように一つひとつ考えていくと、「都会にこだわる必要はないのでは? むしろ、地元に帰って自然の多い環境で子育てするほうがいいかもしれない」とか「地元には両親もいるし、子育てのサポートが得られれば安心して働ける。子どもにとっても家族が多いほうが幸せではないか」と、地元に戻る選択肢が魅力的に見えてきます。

 

自分の幼少期に温かい家族の触れ合いや友達と楽しく過ごした原体験がある人ほど、地元回帰の気持ちが膨らんでいくものです。このほか長男や一人っ子などの場合は家の跡取り問題もあって、地元へ帰る選択をより強く意識します。

 

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本連載は江口勝彦氏の著書『幸せのUターン転職』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再編集したものです。

幸せのUターン転職

幸せのUターン転職

江口 勝彦

幻冬舎メディアコンサルティング

30代になると結婚や子どもの誕生、マイホームの購入、親の介護などさまざまなライフイベントを迎えます。 そのタイミングで都会からのUターン転職を考える人もいますが、年収やキャリア形成の不安から「自分が働ける場所はな…

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