(※写真はイメージです/PIXTA)

2021年の東京オリンピック・パラリンピック閉幕以降も続く市街地整備事業の影響で、公道上の「不法占拠店舗」が一掃されようとしています。違法ではありながら存在を黙認され、長きにわたって人々に親しまれてきた商店街・屋台街には、観光資源として存続の声も上がるなど複雑です。歴史的背景とともに考察します。

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    不法占拠に対する政府の対策は?

     

    自治体が商店街や屋台を立ち退かせる第一の目的は、不法占拠のために滞っている街のインフラ整備を進めるためです。

     

    もちろん、地域経済の活性化に必要な事業ではあるのでしょうが、引き換えに、観光客をひきつける抒情的な街並みや、唯一無二の味を提供する店舗の歴史に終止符が打たれるのは寂しいことです。

     

    一方で、公道上に建物を造り独占することは明らかに違法であり、不法占拠は周囲の交通に支障を来たすのはもちろん、なにより法律を順守して営業する近隣店舗にとっても気分のいいものではありません。

     

    政府はこのような公共空間の不法占拠(不法占用)に対し、以下のような対策を行っています。

     

    ■簡易除却制度

    はり紙、はり札、広告旗、立看板といった屋外広告物などについて、道路管理者が委任を受けて除却を実施する。

     

    ■不当利得返還請求

    はみ出し自動販売機などについて、訴訟手続等により、不法占用期間にかかる占用料相当額を請求する。

     

    ■行政代執行

    突出看板や日除け等の固着した不法占用物件などについて、行政指導を実施し、従わない場合には監督処分を実施。履行がない場合に行政代執行による除却を実施する。

     

    上記のような不法占用行為に対して、罰則として1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されます。

    登記を備えれば「立ち退き」を免れられる?

     

    ところで、不動産所有には「取得時効」というルールがあります。それは、真の不動産所有者ではないものの、10年間“所有の意志”をもってその不動産を占有し続け、10年目以降に登記を備えれば、真の所有者として認められるというものです。

     

    具体的に説明しますと、祖父・祖母の代から暮らす実家が実際は借地であったものの、祖父・祖母の死後、そのことを知らなかった子や孫が実家を相続して不動産所有権登記をしてしまえば、祖父・祖母に土地を貸していた大家(=真の所有者)から土地の所有権を奪うことができるというものです。

     

    真の所有者が注意しなければいけないのは、先祖(故人)の代から他人に貸し続けている不動産です。先祖が借主と口約束のみで貸借していた場合、契約内容は当事者同士の記憶に頼るしかありません。貸主が死亡し、借主も貸借について相続人に伝えないまま死亡してしまうと、相続人の取得時効が成立する可能性があります。

     

    先祖名義から真の所有者への移転登記済みなら心配ありませんが、印紙税や司法書士手数料を惜しんで未登記のまま放置していると、所有権が宙に浮いた(この世に生存する誰の所有でもない)状態になります。その隙に故借主の相続人(10年以上の占有者)に登記されてしまうと、所有権が奪われる危険性があるのです。

     

    前述の浅草・伝法院通りの事例で、台東区が商店会との間で土地に関わる契約等を交わした記録はないと言うならば、商店会は所有の意思を持って40年以上土地の占有を続けてきたわけですから、ここに取得時効が成立します。もしその土地が公道として登記されていなかったら、商店会は登記を備えることにより立ち退きを免れたかもしれません。

     

     

    次ページ一方で「貴重な観光資源」との評価も

    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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