(※写真はイメージです/PIXTA)

「クールジャパン」は日本の文化やポップカルチャーなど、外国人がクールととらえる日本の魅力を発信し、日本の経済成長につなげるブランド戦略です。アベノミクスの柱、成長戦略のひとつでしたが、明らかに失敗しているといいます。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制))やめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で解説します。

税金に群がっただけの最悪の仕組みだった

少し考えればすぐに分かることですが、この取組みは実際には役所の人がやって来て「我が国の文化は、これが面白いのです」と伝えれば、それを面白いと思わねばならない、という話です。

 

政府が「これが我が国の素晴らしい文化だ」と認定して展開すれば、これまで知らなかった人に知ってもらうことはできるかも知れません。しかし、それは人々の中から自発的に出てきた文化が世界に向けて広がることとは別の話です。

 

政府が音頭をとって事業を展開したクールジャパンがどのような経過をたどっているのか、政治・外交ジャーナリストの原野城治氏が次のように問題点を指摘しています。

 

<日本の文化を海外に紹介し、マンガ・アニメ、食、ファッションなどの輸出を支援すると官民ファンドの産業革新機構が投資した事業が成果ゼロのまま次々に打ち切られ、その株式が民間企業に極めて廉価で売却されている。

 

中には20億円以上の「全損」案件もあり、税金の無駄遣いがはなはだしい。特に、2013年11月に鳴り物入りで設立された「海外需要開拓支援機構」(クールジャパン機構、東京都港区)のいくつもの投資事業案件が苦戦続きとなっている。(中略)

 

ブランド戦略である「クールジャパン」の戦略的コンセプトはイメージ先行で、コアが判然としない>

 

漫画やアニメは、はっきりいえば今まで青少年の健全育成の問題などで、政府は問題視していたぐらいのものです。子供の頃に「漫画やアニメなんか見るな」と言われて育った人も多いでしょう。

 

ところが、どうもお金になるらしいと目を付けて、政府が海外展開するための予算を付けたら、大失敗したという話です。

 

投資主体となった産業革新機構は、平成21年(2009)に設立された投資ファンドです。政府出資が9割、残りは民間(企業26社・2個人)が少し出資しています。政府保証で借り入れが可能なので、最大で2兆円を超える投資能力があるとされています。

 

そこに色々な人たちが群がってみんなでお金を使うという、最悪の仕組みです。今回は漫画やアニメなどのポップカルチャーが食い物にされたというのが、クールジャパンの顛末です。

 

海外にこうしたコンテンツを持っていくとき、大抵は展示会ビジネスのような形をとります。当たり前の話ですが、漫画やアニメを見るときは、展示会で見るというよりも作品そのものを見ます。

それだけでもクールジャパンは無意味の代名詞のようになっていますし、逆に政府が「これが日本の漫画です」と認定するような話になってしまうと、そこに入る作品と入らない作品の基準や線引きが起こってきます。大勢の読者・視聴者が良いと思っても、政府に認定されていないものというレッテルが貼られる、それほど面白くはないけれども政府認定を受け予算が付く、こうした線引きは産業自体を腐らせる力となってしまいます。

 

これが民間なら、読まれない・見られないものなら市場から撤退します。失敗したらやめて、新しいものを作ります。色々な形で事業失敗の責任を取らされることもあるでしょう。政府のやっている事業は、市場なら失敗しているようなものにも予算が付き続けて責任を取る人がいなくなることが問題なのです。こういうことを続けていると新しいものも生まれないので、文化が潰れてしまいます。

 

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※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

現在の日本の政治や経済のムードを変えていくにはどうしたらよいのでしょうか。 タックスペイヤー(納税者)やリスクを取って挑戦する人を大事にする政治を作っていくことが求められているといいいます。 本書には「世の中に…

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