写真提供:アトリエカムイ

記事前編では、「日本で住宅の断熱性能が軽視され続けてきた背景」について解説してきました。後編では、今後予想される「住宅性能の制度改革」と、これから家を建てる人へのアドバイスについて、住まいるサポート株式会社代表取締役・高橋彰氏と東京大学大学院准教授・前真之氏がインタビュー形式で解説していきます。

「気密性能の確認」、「太陽光発電」のススメ

Q:等級6・7ができる一方、気密性能の基準についてはあまり議論されていないように思いますが、先生は気密性能については、どのようにお考えですか?


A:「断熱」は熱の勝手な出入りを防ぐものですが、「気密」は空気の勝手な出入りを防ぐものです。日本の家は気密性能がひどく不足しているために、冬に外の冷たく重たい空気が床や壁の隙間から室内に侵入するので、足元がひどく冷え込みます。

 

また暖房された室内の軽い暖気が天井の隙間から外に漏れてしまうため、暖房に大量の熱が必要になってしまいます。

 

断熱と気密は、ともに少ない熱で快適に暖房するために不可欠であり、さながら車の両輪です。かつては断熱等級4にも気密の規定がありましたが、ある時期から削除されてしまいました。今回新設される等級5・6・7においても、残念ながら気密の規定はありません。

 

暖かさを実感できる家を手に入れるには、断熱等級だけでなく、気密性能も忘れずに確認する必要があります。

 

Q:等級6・7ができる前に新築を考えている方々にアドバイスがあればお願いします。


A:等級6・7のベースとなったのは、HEAT20(一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)という団体が定めた、G2・G3という断熱基準です。今でも高性能な住宅では、HEAT20 G2/G3相当と表示されている場合が多いので、目安にしてください。

 

また、温かさを実感するために不可欠となる気密性能については、C値(相当隙間面積)の値「1以下」が目安となります。「断熱はHEAT20 G2以上」「気密はC値1以下」と覚えておけば、大丈夫です。

 

Q:また太陽光発電については、2030年までに新築戸建て住宅の約6割に太陽光発電設備を設置することが目標になりましたが、太陽光発電の設置を迷っている方々にアドバイスはありますか?

 

A:太陽光発電については、ネガティブな情報が飛び交っていますが、しっかりとファクトチェックすることが必要です。そもそも、住宅のスケールで日常生活に必要な量の電気を自然エネルギーで賄えるのは、太陽光発電だけであり、カーボンニュートラルの実現には欠かせません。

 

余った電気を系統に売る際の単価が下がったために「太陽光発電はもうペイしない」と言う人がいますが、実際には設置コストも大幅に下落しており、適切に設置すれば今でも10年少しで元を取ることが可能です。

 

石炭や天然ガスなどの国際価格が高騰する中で系統から買う電気の値上げは不可避ですから、太陽光発電によって電気代の上昇リスクをヘッジすることは重要です。新築の時こそ安価でキレイに施工できるので、太陽光発電は絶対に載せることをおすすめします。

 

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前先生、ありがとうございました。

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