もうひとつの長期的なトレンド…脱炭素化の動き
もうひとつの長期的なトレンドである新興国におけるCO2排出量の実質ゼロを目指す動きでも、テクノロジーは重要な役割を果たしています。
消費電力が少ない高性能のハードウエアを生産するには、先端半導体がカギを握ります。消費者向けと産業向けのインターネットのアプリケーションも、サプライチェーンの最適化や物流の合理化、CO2排出量の削減につながるその他の効率化に寄与しています。
二酸化炭素(CO2)排出量が多い企業の多くは、CO2コストの増加を見越して、積極的にテクノロジーを活用してCO2排出量の削減に取り組んでいます。たとえば、韓国の鉄鋼メーカーは、高炉の運転状況を監視・最適化するためにAIを開発し、エネルギー消費の削減を可能にしています。
CO2排出量が多く、脱炭素化に取り組む意思と脱炭素化の技術的ツールをあわせ持つ企業は、将来、CO2コストの上昇を乗り越えられることから、そうした企業には投資機会が存在すると考えています。
新興国市場は、電動化と再生可能エネルギーの推進も加速させています。我々は電気自動車(EV)のバリューチェーンに関わる企業に対して楽観的な見方をしていますが、そうした我々の見方を裏付けるように、EVの普及は速まる可能性があります。
新興国市場の世界トップクラスの太陽光関連企業に対しても前向きな見方をしています。
「市場の懸念」への対応
テクノロジーと脱炭素化は中国の長期的な投資テーマであると考えていますが、ゼロコロナ政策と度重なるロックダウンにより、足元の経済成長は滞る可能性があります。また、中国の規制変更により、一部の大手インターネット企業に対する成長期待も見直されています。
その一方で、そうした点は株価のバリュエーションに十分に織り込まれていると考えています。
ロシア・ウクライナ関係の緊迫化を受けて、ロシア株式市場は国際商品価格の上昇による直近の高値から下落しています。地域情勢をめぐる不透明感には注意が必要ですが、ロシア株式市場のバリュエーションには投資妙味があると考えられます。
ロシア以外では、ブラジルの株式市場も金利上昇、財政懸念、2022年の総選挙をめぐる政局の先行き不透明感を背景に下落していますが、ブラジルの株式市場には割安感があるとみています。ブラジルはコロナ禍からの回復の恩恵を受けやすいとみており、インターネット経済の普及による効率化を支えに、経済成長は上振れする可能性があります。
サプライチェーンの混乱、需要の先送り、国際商品価格の上昇により、インフレが市場の主な懸念材料となっています。我々は新型コロナウイルスの行動制限が徐々に緩和されることで、サプライチェーンのボトルネックは解消に向かう可能性があるとみています。需要も正常化し、国際商品価格の下支え効果も低下する可能性があります。
これらの要因から、インフレは新興国市場にとって長期的な懸念材料にはならないとみています。
投資テーマとしての持続可能性
新興国市場は、進化と進歩が長期的なテーマとなります。様々な変化が起きるなか、我々が最終的に注目しているのは、持続可能な収益力を持ち、バリュエーションが魅力的な水準にあると思われる企業です。また、変化する事業環境に柔軟に適応できる経営陣の存在がカギになります。
また、長期的に耐えうる優れた競争優位を持つ企業にも注目しています。我々の投資アプローチは、市場サイクルにかかわらず、新興国市場の投資機会を捉えることができる長期的な運用手法であると考えています。
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