(※写真はイメージです/PIXTA)

金融庁は経営体力が万全ではない地方銀行間の再編をコロナ前から進めてきました。世界的な金融緩和のなかで銀行経営に苦しむ地銀再編はどのように進むのでしょうか。国際投資アナリストが解説します。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

SBIHDは「地方再生グループ」を形成へ

しかしここで少し複雑な話も出ておきます。それは金融庁が、地銀再編の旗振り役として自主性の促進等を実施してきたにも関わらず、コロナショックの影響から改正金融機能強化法(2020年6月12日に成立)を通じて、『公的資金の申請期限を4年間延ばし、2026年3月』にしました。

 

背景として、リーマン・ショック後に公的資金を受けた地銀10 行のうち、完済できたのは、北洋銀行1行のみであり、また東日本大震災後に公的資金を入れた銀行を含めると、現在の注入行は13行もあるわけです。しかし公的資金を除いた実質自己資本比率では未だ健全化できておらず、このコロナショックの際に、各地方経済の疲弊が地銀経営に大きく影響し、倒産しないのか、という懸念から導入された時限措置であります。

 

総合すると、地銀再編への方向へ促していきたい、という金融庁の大きな方向性は依然残っているものの、現下のコロナ禍での地方経済の疲弊度合いや、遠藤長官が記事でもコメントされていた、金融庁と地方金融機関との信頼関係醸成+ 中長期的な視点での関わり改善が必要、など個別多彩な対応が金融庁としても必要となり、経営の収益性というような簡単なベクトルのみで、大きく再編とはすぐには向かわないのでは、とは感じています。

 

一方で政府から期待されている地銀再編にてリードしているのは、SBIホールディングス、だと考えます。過去二年で、金融庁が限界地銀として見ていた4行(島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行)と次々に資本・業務提携を発表し、2020年5月29日には福島県の地銀「大東銀行」の筆頭株主となり、SBIのIT システムや資産運用サービス、個人向け金融商品の提供を通じて、経営効率向上を促す、と言われました。

 

加えてSBIの北尾吉孝社長によって設立された「地方創生パートナーズ」という地方創成ファンドも地銀再編の受け皿となっていくようにも見えます。そして同ホールディングスは金融庁OBの雇用など着々と進めてきており、2020年7月29日には、さらに中堅証券会社(ライブスター証券)を買収も発表しました。決算発表(同年7月30日)の際には、北尾社長から、あと6ー7行ほどの地銀との提携を来る同年9月ごろを目途に行い、計10行程度の地銀との協業を進めたい、というような趣旨のコメントされたようです。

 

今後の銀行業界において、下記のようなグループ分けができるのかな、と思っていますし、注目していきたいと思います。

 

①メガ三行と言われるグループ(MUFG、SMBC、Mizuho)
②地方密着で、政府・霞が関に近い金融機関(JAグループ、郵政グループ)
③地銀の雄といわれるリード地銀とSBIによる地方再生グループ
④その他地銀や、信託銀行、また信金、商工中金など

 

 

後藤 康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

 

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