圧倒的な品揃えを誇るフライパン。

「これが欲しかった!」と思える料理道具は一切値切らずに、喜んで購入してくれると気づいた。ならば、〝超〞がつくほどマニアックな品揃えを持つ専門店をつくればいい。これから進むべき道が見えてきたが…。本連載は老舗料理道具専門店「飯田屋」6代目の飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

目指すは、マニアックな品揃えの料理道具専門店

SWOT分析では、実はどちらも「それ、かっぱ橋道具街のほかの店も同じだよね……」と言われる程度の強みにすぎません。

 

しかし、この二つを掛け合わせたら、新しい強みになることに気づきました。しかも、ライバル店の中に、この二つの強みを掛け合わせて活用している店はありませんでした。

 

これまでの飯田屋は、ほとんどがプロの料理人たちに向けたBtoBの商売でした。ところが、詳しく調べると「プロ向けの高品質な道具だから買いたい」という一般のご家庭の方がいらっしゃることがわかりました。

 

そこで、BtoB向け商品をBtoC、つまり一般のご家庭の方にまで対象を広げることにしました。名づけて「BtoBtoC作戦」。客数は増え、利益率も上がるはずです。

 

逆に、BtoC向け商品の中にもBtoBのお客様に喜ばれるものもあります。たとえば、100円ショップの商品をプロの料理人たちもよく利用しているそうです。彼らも料理の味にあまり影響を与えないものは家庭用としてつくられたもので十分なのです。

 

そこで、BtoC向け商品をBtoB、つまりプロの料理人にまで対象を広げることにしました。名づけて「BtoCtoB作戦」。さらに客数は増え、利益率もより上がるはずです。

 

この作戦の成功には一つの条件があります。たった一人に心から「これが欲しかった!」と言わせるだけの決め打ち商品をどれだけ取り揃えられるかです。

 

かといって、在庫を多く持つ必要はありません。なぜなら、同じフライパンを一日のうちに何十枚も買っていくお客様はほとんどいないからです。

 

多くの場合は、一日に1枚売れるかどうかでしょう。だったら、用意する在庫量は「1枚」でいいことになります。このとき、1枚から注文でき、17時までに注文すれば翌日の開店前には届くという、二つの強みの掛け合わせが生きてきます。

 

たった1枚しか在庫がなくても、さまざまな機能の違うフライパンを100種類揃えまくることができます。そして、フライパンを探しにきたお客様が感動するほどの品揃えと商品知識を持ってお迎えしたいのです。

 

3代目の祖父が当時、買える道具がないと困っていたまちの精肉店のために、精肉用品専門店に商いを替えました。それによって、全国の多くのお客様に愛されたのです。

 

「ならば僕は、料理道具選びで困っているあらゆる方々に〝超〞がつくほどマニアックな品揃えを持つ専門店をつくればいい!」

 

これから進むべき道が、やっと見えてきました。

 

 

飯田 結太
飯田屋 6代目店主

 

 

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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