(※写真はイメージです/PIXTA)

マンションの大規模修繕工事は何年おきに行うべきなのか。一般的には「12年周期」で行うべきとされ、それを推奨する管理会社や工事会社も多い。実際、マンション管理組合や住民はどう考えるべきなのか。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

外壁全面打診に代わらるローン赤外線調査法

国土交通省から公表されています「長期修繕計画作成ガイドライン」では修繕周期は、新築マンションの場合、推定修繕工事項目ごとに、マンションの仕様、立地条件等を考慮して設定します。また、既存マンションの場合、さらに建物及び設備の劣化状況等の調査・診断の結果等に基づいて設定します。

 

設定に当たっては、経済性等を考慮し、推定修繕工事の集約等を検討するとしていて、劣化状況等の調査・診断の結果に基づいて設定することになっていて特に12年周期とはなっていません。

 

しかし、ほとんどのマンションの大規模修繕工事は「12年周期」で長期修繕計画が作成されることが多いようです。これは建築基準法施行規則の改正(2008年4月1日施行)により、定期調査報告における具体的な調査項目、調査方法、および判定基準が、「国土交通省告示第282号」に定められ、外壁の全面打診調査が義務付けられましたことが影響していることが考えられます。

 

築後10年を経過した外壁がタイル貼りなどのマンションは、3年以内に外壁の全面打診調査を行う必要があると規定されました。外壁の全面打診調査は費用が多くかかることから最近では外壁全面打診に変わる方法としてドローンによる赤外線調査法が費用や安全面から注目され、色々の建物においても年ごとにドローンに赤外線カメラと解像高いカメラを搭載して調査法で外壁調査や劣化調査を行う事も考えられます。

 

この方法は、平成20年4月に改正された定期報告での外壁検査方法としても正式に認められ、全面打診に代わる足場の要らない調査として注目されています。

 

管理組合からのご相談では12年毎の大規模修繕工事が義務とされていると思い違いをしている方は意外と多くおります。

 

築後10年を経過した外壁がタイル貼りなどのマンションは、3年以内に外壁の全面打診調査実施をしていれば、多額費用が掛かる大規模修繕工事を、12年毎に行う義務はないことがないことは理解していただけたと思います。

 

60年のスパンで大規模修繕工事を考えると、12年周期で実施すると5回の大規模修繕工事が必要ですが例えば15年周期で実施することで4回になり1回分の大規模修繕工事の費用を節約できることになります。

 

大規模修繕工事の費用はマンションの場合には、足場(仮設)の費用が多くかかることが多いので、足場を設けなくても工事を行うことができる箇所の補修をしておくことは可能です。足場を掛けて作業しなければならない部分を優先して補修を実施して、足場が必要な箇所個所はまとめて補修することで大規模修繕工事の回数を減らすことが可能になります。

 

そのためには、修繕工事の履歴、工事を実施にあたり入念な現場調査が大変重要になります。

 

松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表

 

 

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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