(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化社会が進み、介護に関する話題は尽きません。歳をとるとともに、誰でも体の機能は衰えます。あるいは病魔に侵されてしまい、起きることができなくなってしまう人も大勢いることでしょう。介護される本人の気持ちは、その方自身にしかわかりませんが、同時に介護する側もさまざまな自由が奪われることになります。とくに自宅での介護には様々な問題が潜んでおり、その悩みも人によっていろいろ。果たして自宅介護には、正解はあるのでしょうか。実父の自宅介護生活をお話しながら、闘病生活の一部始終を数回に分けてお伝えします。

予告なしに始まる闘病生活の日々

都内で弟と工務店を営んでいた父は、それまで病気ひとつしたことのない、いわゆる昭和世代の社長でした。いわゆる頑固おやじの部類のタイプで、現場に来ては大きな声で職人さんたちにいろいろ指示を出していました。そんな父に異変が表れたのは、現場で転んだことでした。その後も何度か転倒し、腕にも違和感があり、なにか錘のようなものをぶら下げたような感覚に気がつきました。痛みを伴うものではなく、倦怠感のような感覚。ただ、まったく動かないわけではないので、そのときはあまり深く考えなかったそうです。疲れが溜まっただけだろう。そう考えていた父でしたが、これが闘病生活の幕開けになるとは、本人はおろか、家族の誰もがまったく想像していませんでした。

 

腕の倦怠感は軽くなるどころかまったく変わらず。地元の診療所でレントゲンを撮影しても異常はなく、原因はわかりませんでした。このままでは運転にも影響が出ると判断した父は、大学病院を紹介してもらい診察を受けることにしました。様々な検査を経て出た結果はALS(筋萎縮性側索硬化症)の上肢型。このALSとはいわゆる運動機能が徐々に失われていく原因不明の難病です。近年ではある政党が、この患者を立候補者として話題を集めていたことでも知られるようになってきました。

 

このALSは上肢型・球型・下肢型と分けられることがあり、父は診察を受けた大学病院で上肢型と宣告されました。この上肢型とは、上肢の筋萎縮と筋力低下からはじまり、下肢は痙縮をする症状が特徴です。父はほどなく、腕がまったく上がらなくなってしまいました。それだけではなく、足をあげることも困難になりはじめ、階段などはひとりであがることもできない状態になってしまったのです。

 

医療の研究は日々、目覚ましい進化を遂げており、これまで不治の病といわれてきた病気が根治されるケースも増えてきました。しかし、このALSという病気は、グルタミン酸拮抗剤リルゾールを投与することで、わずかですが進行を遅らせる程度しか対処方法がありません。今後の研究に期待をするしかないのですが、父からすれば、発病してからの存命期間平均が約3.5年という、一種の余命宣告を受けてしまったようなものだったのです。

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