本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

大企業・製造業・業況判断DIは+2程度と19年9月調査以来のプラスを予測

 

新型コロナによる景況感の大幅悪化から、3期連続で持ち直しを予測

 

大企業・非製造業・業況判断DIは▲2程度と前回比3ポイント程度改善を予測

 

 

●3月調査日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが+2程度と12月調査の▲10から12ポイント程度改善し19年9月調査の+5以来のプラスに転じると予測した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため緊急事態宣言が発出された時期であり、食料品など芳しくない業種もあろうが、足元の輸出持ち直し生産増加基調継続という経済活動回復の効果が出て12月調査より製造業全体の景況感は改善しそうだ。

 

●また、大企業・非製造業の業況判断DIは▲2程度と、こちらは12月調査の▲5から3ポイント程度改善するもののマイナスになるとみた。

 

●この予測は、日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(3月調査)やロイター短観(3月調査)などを参考にした。

 

●3月15日に発表されたQUICK短観3月調査の調査期間は3月1日から3月10日である。製造業DIは12月調査の▲4から8ポイント改善し+4となった。また、非製造業DIは12月調査の+5から4ポイント改善の+9となった。

 

 

●3月17日に発表されたロイター短観3月調査の調査期間は3月3日から3月12日である。3月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは12月調査の▲9から15ポイント改善し+6になった。3月調査200社ベースの製造業の業況判断DIは12月調査の▲13から24ポイント改善し+11になった。

 

●また、ロイター短観3月調査400社ベースの非製造業DIは12月調査の▲4から1ポイント悪化し▲5になった。しかし、3月調査200社ベースの非製造業の業況判断DIは12月調査の0から3ポイント改善し+3になった。

 

 

●なお、3月調査の大企業・製造業の業況判断DIが予測通り+2程度なら、12月調査の「先行き見通し」▲8を10ポイント程度上回ることになる。事前の予想を上回り、思ったより景況感が上振れたことになる。また大企業・非製造業が予測通り▲2程度なら、12月調査の「先行き見通し」▲6を4ポイント程度上回る。非製造業でも前回調査時の先行き予想を上回ったということになろう。

 

●QUICK短観3月調査の製造業の6月までの「先行き見通し」は+9で3月実績の+4より5ポイント改善の予想、一方、非製造業の6月までの「先行き見通し」は+13で3月実績の+9から4ポイント改善予想である。

 

●一方、ロイター短観3月調査の6月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースで+15と3月実績の+6から9ポイント改善の見込み、製造業・200社ベースで+17と3月実績の+11から6ポイント改善の見込みである。一方、非製造業・400社ベースの6月までの「先行き見通し」は+5と、3月実績の▲5から10ポイント改善の見込み、非製造業・200社ベースで+10と3月実績の+3から7ポイント改善の見込みである。

 

●日銀短観の大企業・業況判断DIの6月までの「先行き見通し」は、QUICK短観やロイター短観などを参考にして、製造業で3月実績比7ポイント改善の+9程度、非製造業も3月実績比7ポイントの改善の+5程度と予測した。

 

●3月調査日銀短観の中小企業の業況判断DIは製造業が▲21程度と12月調査の▲27から6ポイント程度改善すると予測した。非製造業は12月調査の▲12から1ポイント程度改善し▲11程度になるとみた。この予測値は、景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DIなどを参考にして予測した。

 

●参考データの景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DI・季節調整値の最近の推移は製造業が20年9月調査29.5、10月調査33.3、11月調査33.7、12月調査34.4、21年1月調査35.7、2月調査40.0と、景気判断分岐点の50を下回る水準ではあるものの緩やかな改善が続いている。

 

●一方、非製造業は20年9月調査31.5、10月調査34.4、11月調査36.3、12月調査33.4、21年1月調査31.4、2月調査34.8と、こちらも景気判断分岐点の50をかなり下回る水準での推移である。11月まで持ち直したが、その後新型コロナウイルス感染拡大第3波の影響で、21年1月まで低下した。2月は少し持ち直した。なお、日銀短観は水準の調査なので、景気ウォッチャー調査の方向性の現状判断DIではなく、参考データの現状水準判断DIの方を重視した。

 

●日銀短観の中小企業・製造業の業況判断DIが▲21程度と予測通りなら、12月調査の「先行き見通し」の▲26より5ポイント高い水準で、事前の見通しより改善したことになろう。また中小企業・非製造業が▲11程度と予測通りなら、3月調査の「先行き見通し」の▲20を9ポイント上回ったことになる。こちらも景況感が事前に思ったより改善したことになろう。

 

●日銀短観の中小企業・業況判断DIの6月までの「先行き見通し」は、製造業で3月実績比3ポイント改善の▲18程度、一方、非製造業は3月実績比2ポイント悪化の▲13程度と予測した。中小企業・非製造業では先行きをいつも慎重にみるというクセも考慮した。ワクチン接種がそれなりには進むなど、新型コロナウイルスの感染が先行き収束に向かうという期待感が、先行きの不透明ながらも景況感改善に繋がろう。

 

●20年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲2.7%程度と予測した。12月調査の同▲1.2%から減少率が拡大すると予測した。先行きの不透明さから、企業が設備投資に慎重になっているとみた。法人企業景気予測調査や、景気ウォッチャー調査から作成する設備投資DI、過去の修正パターンなどを参考にした。

 

●21年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比+5.4%程度と予測した。

 

●20年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲12.2%程度と、12月調査の同▲13.9%からやや上方修正されると予測した。中小企業の設備投資計画は例年3月調査が弱く、その後は1年後の3月調査まで調査の度に改善していく傾向があるが、今年度も3月調査は12月調査よりいつもの年よりは小幅だが改善するとみた。

 

●21年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲12.7%程度と予測した。

 

<3月調査日銀短観・予測値>

1)大企業

3月製造業DI                                                         +2

3月非製造業DI                                                      ▲2

6月製造業DI                                                         +9

6月非製造業DI                                                      +5

2020年度設備投資計画(全産業)前年度比                ▲2.7%

2021年度設備投資計画(全産業)前年度比                +5.4%

 

2)中小企業

3月製造業DI                                                           ▲21

3月非製造業DI                                                        ▲11

6月製造業DI                                                           ▲18

6月非製造業DI                                                        ▲13

2020年度設備投資計画(全産業)前年度比                   ▲12.2%

2021年度設備投資計画(全産業)前年度比                   ▲12.7%

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年3月調査 日銀短観 予測』を参照)。

 

(2021年3月17日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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