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ブラジル中央銀行:インフレ率上昇懸念を前に、利上げの可能性
ブラジルのルラ元大統領は左派で人気がありながら有罪判決により大統領選挙出馬できませんが、これを覆す可能性が示され、通貨レアル(図表1参照)は下落しました。
ブラジル中央銀行は3月17日(日本時間、18日早朝)に金融政策決定会合の結果を発表することが予定されています。ブラジル中銀は前回(1月)会合まで4回連続で政策金利を過去最低水準となる2.00%に据え置いてきました。しかし、市場予想では次回の会合で2.50%へ利上げすることを見込んでいます。
どこに注目すべきか:インフレ率、レアル安、財政規律、現金給付
ヘッドライン21年1月25日号『ブラジル中銀、フォワードガイダンス変更の意味』でブラジル中銀の政策について利上げの準備を進めると述べました。そこでは利上げは様子を見てからというトーンでした。
しかし次回の会合での利上げの可能性が高まったと見ています。インフレ率の上昇予想(図表2参照)などが理由ですが、その背景はレアル安です。通貨安抑制に向け利上げカードを切る必要に迫られる展開を想定しています。
ワクチン接種の拡大による景気回復期待から資源価格は概ね上昇傾向です。しかしながら、世界でも有数の資源大国であるブラジルの通貨レアルは相対的に軟調です。最近の米国長期金利の上昇や、新型コロナウイルスは新興国全般に影響を与えており、ブラジルも同様に影響を受けています。ただ、相対的に(他の新興国に比べ)レアルが弱い背景として主にブラジル独自の事情が考えられます。
新型コロナウイルスは世界共通の問題ですが、ブラジルの場合は変異ウイルスの感染拡大の影響が深刻です。足元の新規感染者数が1日当り8万人超と世界最多となっており、ブラジルは当面コロナ対応が重い課題となりそうです。
次に、財政悪化懸念もレアルの悪材料です。18年の選挙で当選したボルソナロ大統領は年金改革など財政規律を重視していました。結果としてインフレ率も比較的落ち着いていました。
しかし、コロナの感染者が拡大してからは、低所得者向け現金給付を手厚くするなど、左派政権のような政策も採用しています。財政不安を受け一旦は停止した現金給付も先月再開を発表しています。
なお、ブラジルでは来年大統領選挙が行われる見込みです。仮に左派に鞍替えしたかのようなボルソナロ大統領が姿勢を変えず、左派の本家ルラ氏と争うとなれば、ブラジル財政の更なる悪化も想定されます。
レアル安を受け、インフレ率上昇も懸念されるなか、そのインフレ対策にも疑問が残ります。2月にはディーゼル燃料価格の引き下げを求め、国営石油会社の経営者を更迭したことがレアル安の要因となりました。ブラジルではインフレ率が上昇すると消費が落ちる、反対にインフレ率が低下すると消費が伸びる傾向が見られます(図表2参照)。したがって、インフレ率を抑える政策は方向として理解できます。しかし、国営会社とはいえ、このようなやり方を市場は評価しませんでした。
では何があるかといえば、利上げを選択すると想定しています。筆者は1月時点では利上げ時期を明確にしませんでしたが、次回の会合での利上げの可能性が高まったと見ています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『波に乗れないブラジルレアル』を参照)。
(2021年3月10日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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