こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

政府と国民に信頼関係があってこそ成り立つこと

オープン・ガバメントは、政府と人々の間に信頼関係があってこそ、成り立ちます。以前から台湾の政府は「人々を信頼しなければならない」と述べていました。もし、「政府が人々をよく理解していない」と感じたのであれば、人々の側から政府にクリエイティブな見解を示せばいいわけです。逆に、政府が人々をまったく理解せず、政治に参加する必要もないと感じたならば、人々は最終的に政治に対する関心を失うでしょう。

 

最近、台湾でも司法の分野において、裁判員制度が始まることが決まりました。これもまた、裁判官が必ずしも物事を最も理解しているということではなく、「民間人が裁判官として参加したとしても、それぞれの角度からの見解を出せるだろう」という考えに基づいたものです。

 

つまり、大部分の時間を法律に関わる仕事に使い、一般の生活経験が乏しいであろう裁判官とは違う見解を、民間人に期待しているわけです。このように立場や地位によって人を分け隔てしないインクルーシブな感覚は、オープン・ガバメントの実現にとって、非常に重要な要素になります。

 

もしこうした感覚を政府が持っていなければ、裁判員制度を作り、人々に「法廷に参加してほしい」と要請しても、誰も参加したいとは思わないでしょう。日本でも「裁判員制度とはいかなるものか」について長い時間をかけて議論を重ね、人々に周知することで、やっと裁判員制度が人々に認知されたと聞いています。それはまた、法律制度全体の問題をより平易な方法で人々に理解してもらうために欠かせないプロセスであったはずです。

 

オープン・ガバメントを定着させるには、このように時間も必要で、何よりも人々に丁寧に説明し、理解してもらう姿勢が求められます。

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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オードリー・タン

プレジデント社

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