一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、その実現は困難ではないかと指摘されている。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

 

年間1000時間超の残業をどうにかしたい!

2012年静岡病院に赴任して改めて、私は、医局員たちの労働環境がかなり厳しいものであるという現実を再認識させられました。

 

朝7~8時頃から出勤し、夜は22時~23時まで病院にいる。休みの日も、心配な患者さんがいてその容態を確認して、必要に応じて私に電話報告もしてくれていました。本当に医局員みんなが病院と宿舎を往復するだけの毎日を送っており、一様に疲れた表情をしているのです。今から考えると、年間の残業時間は1000時間を超える計算です。

 

コーチングを学び、部下がどの様なことで困っているかヒアリングを開始。(※写真はイメージです/PIXTA)
コーチングを学び、部下がどの様なことで困っているかヒアリングを開始。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

科長としては、この状態何とかしてあげられないものかと、思いました。思いましたが、実際にどうすればよいのか、何から始めればいいのか、全く見当がつかず途方に暮れていた、というのが正直なところです。

 

ご存知の通り、着任した2012年はまだ「働き方改革」といった言葉すらもなく、改善しようにも見本となる事例はまったく見当たりませんでした。ただただ、医局員みんなの残業時間が1時間でも短くなれば「御の字」といった程度の淡い期待をいただきつつ、苦し紛れではありましたが、結果的には後ほどご紹介するコーチングを取り入れて業務改善を図っていくことになっていきます。

 

地域医療を懸命に支えている現場の医療者たちが、新型コロナや大災害のような特殊な状況下ではない“平時”でも、非常に忙しく常に疲弊している。医局員のことはもちろん心配ですが、同時に地域の住民の方のことも気にかかりました。以前から、多くの医師が都心から離れた病院に赴任したがらないことは、深刻な問題だと言われていました。このような地方の“厳しい”医療体制はいつ崩壊してしまってもおかしくない。実際に地方医療の現場に従事してみて、その思いをより強くしました。

時間の許す限り、部下が何に困っているかをヒアリング

私は伊豆への単身赴任と同時に、糖尿病患者さんたちが生活習慣を見直し、自らの節制にもっと熱心に取り組んでもらえる助けになればと、個人的に1年半程のコーチングの研修をスタートさせていました。

 

みなさんコーチングをご存じですか?

 

コーチングは、個人の成長や組織の発展を目指すもので、本来部下をやる気にさせるために進化してきたコミュニケーション・ツールですから、私が参加していた研修での宿題でも「部下がどの様なことで困っているかヒアリングしてきてください」といった内容が非常に多く出ていました。

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