世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

トンデモ理論? 「ブードゥー経済学」と呼ばれた

森永康平著『MMTが日本を救う』(宝島社新書)
森永康平著『MMTが日本を救う』(宝島社新書)

国内外で注目を浴びるMMTに対して、見解の多くは否定的である。日本国内でもネット上でMMTについて調べると「トンデモ理論」や「暴論」といった扱いを受けている。海外でも似たような扱いだ。 米国の経済学者で、元財務長官のローレンス・サマーズはMMTを「ブードゥー経済学」と呼ぶ。

 

ブードゥーとは中米ハイチ発の民間信仰のブードゥー教からきている。ブードゥー教では「ロアの神官」と呼ばれる者が行政や司法までを束ねており、儀式の中で予言をしたり、犯罪者をゾンビ化するという能力を持っているとされている。つまり、何も科学的根拠はないということで、MMTを「ブードゥー経済学」と呼んでいるわけだ。

 

財政制度等審議会(財政制度分科会)でも財務省が『わが国財政の現状等について』という説明資料の中で、各国の専門家によるMMTへの否定的なコメントをまとめていると先述したが、そのうちの一部を紹介しよう。

 

米国の中央銀行に当たるFRBで議長を務めるジェローム・パウエルは19年2月26 日の議会証言において、「自国通貨で借りられる国にとっては、赤字は問題にならないという考えは全く誤っている(just wrong)と思う。米国の債務はGDP比でかなり高い水準にある。もっと重要なのは、債務がGDPよりも速いペースで増加している点だ。本当にかなり速いペースだ。歳出削減と歳入拡大が必要となるだろう」と述べた。FRBの歴代議長の多くはMMTに対して否定的だ。

 

前議長のジャネット・イエレンは「MMTを支持しない(not a fan of MMT)。この提唱者は何がインフレを引き起こすのか混乱している(confused)。MMTはハイパーインフレを招くもので あり、非常に誤った理論(very wrong-minded theory)だ」と語り、同じく元FRB議長のアラン・グリーンスパンも「(MMTが実施されれば、)外国為替市場を閉鎖しなければいけない。どうやって為替交換すればいいのか」と「ブルームバーグ」のインタビューに答えている。日本国内でも同様のスタンスだ。

 

第198回国会参議院決算委員会で、自民党の西田昌司議員が求めたMMTについての政府見解に対し、麻生財務大臣は以下のように否定的な回答をしている。「私どもは少なくとも、世界200カ国近くの国相手に、グローバルな市場で、金融とかマーケットが見えておりますので、市場からの受け入れてもらえるようなものでやらないと、極端な議論に陥るということになりますと、これは財政規律を緩めるということでこれは極めて危険なことになり得ると、そういった実験にもっとも適しているからといって、この日本という国をその実験場にするという考え方は私どもは持っているわけではありません」

 

同じく黒田日銀総裁も「このように財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は極端な主張であり、なかなか受け入れられないのではないかというふうに考えております」という否定的な反応だった。

 

※使用されているデータは執筆された2020年3、4月時点のデータです。

 

森永 康平

金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO

経済アナリスト

MMTが日本を救う

MMTが日本を救う

森永 康平

宝島社新書

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