日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺産分割の不平等感によるトラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

解説:生前贈与による不公平感は、争いに発展しやすい

相続トラブルにはいくつかのパターンがありますが、不平等感は揉める原因になりやすいものです。

 

遺言書の不公平な内容から揉めるケースもありますし、生前贈与が絡む場合もあります。相続人が2人いて、一方は生前贈与を受けていて、もう一方は受けていない場合、「遺産を等分に」となっても、不公平感からトラブルに発展するのです。また一方には秘密にしておいた生前贈与がのちに発覚し、大騒動になるケースもあります。

 

事例の場合、生い立ちにおいての不平等感に加え、兄は生前贈与を受けていて、弟は受けていなかったという不平等感もトラブルの原因になりました。

 

ここで押さえておきたいのが、「特別受益」です。生前贈与など、相続人が被相続人から特別に利益を得ていることをいいます。

 

たとえば、1億円を持っている母がいて、子どもは長女と長男の2人がいたとします。そして長女が家を建てるときに2,000万円の援助をしました。その10年後、母の相続が発生したとき、長女は「1人4,000万円ずつ」と主張、長男は「いや、生前贈与2,000万円もらっているんだから、自分は5,000万円を相続する権利がある」と主張しました。

 

どちらの主張が正しいかといえば、法律的には長男です。遺産分割の際、長女の生前贈与は持ち戻して法定相続分を計算します。これを「特別受益の持戻し」と表現します。

 

特別受益のポイントは3つ。まずその「範囲」です。「親族間の扶養援助を超えるもの」とされてていますが、その線引きは非常に難しいです。たとえば、結婚式の際の結納金や挙式費用は特別受益に当たらないとされていますが、居住用の不動産の贈与・その取得のための金銭の贈与は特別受益に当たるとされています。

 

次に「時効」です。特別受益に時効はありません。ただし、遺留分を計算する際の持戻し計算には、10年間の時効が設けられています。

 

最後に「特別受益の持戻し免除」という制度です。たとえば被相続人から相続人に生前贈与がされる際「遺産の前渡し扱いにいなくてもいい」と意思表示がされてあったら、持戻し計算の対象からは外れます。法律的に約束を書面にしておく必要はありませんが、のちのちのトラブル防止のために、遺言書などに記しておくことをお勧めします。

 

【動画/筆者が「特別受益」について、さらに分かりやすく解説】

 

橘慶太
円満相続税理士法人

 

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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