他人に怒られてストレスを感じた経験は、誰もがあるでしょう。ストレスの多い現代社会を生き抜くには、「他人の怒り」への対応力が必要です。本連載では、シニア産業カウンセラー・研修講師の宮本剛志氏の著書、『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、怒りのメカニズムと周囲の怒りに正しく対応する方法を紹介していきます。今回は、人の怒りの発生源と、怒りに対する対処法について解説します。

怒りを左右する人それぞれの「べき(=判断基準)」

「怒り」にとらわれる人が増えている

 

「駅員が乗客に暴力を振るわれた」「店員が客の理不尽なクレームに謝罪を強いられた」「高速道路で執拗にあおられた」・・・。そんな「怒り」を伴うトラブルや事件をニュースで見聞きすることが増えた気がしませんか?

 

カウンセリングの現場でも、怒る人と怒られる人の双方の悩みと向き合うと、いずれも「怒り」を介したコミュニケーションにとらわれている現状から抜け出したいという気持ちがヒシヒシと伝わってきます。

 

「怒り」に悩んでいる人からすると「コミュニケーション」というのは違和感がある言葉に聞こえるかもしれません。

 

どういうことかを理解するために、「怒り」の生まれ方を見てみましょう。

 

「怒り」の判断基準「べき」

 

下記の図表のように「怒り」が生まれるまでには3つの段階があります。つまり、「出来事に遭遇」したことですぐに「怒り」が生まれるのではなく、その間に「出来事の意味づけ」という、怒る人の解釈や判断が入り、怒るか怒らないかを決めているのです。

 

[図表]怒りが生まれるまでの3段階

安藤俊介『アンガーマネジメント入門』朝日新聞出版(2016年)より
安藤俊介『アンガーマネジメント入門』朝日新聞出版(2016年)より

 

この時に判断を左右するのは、怒る人の価値観そのもので、この判断基準をアンガーマネジメントでは「コアビリーブ」と呼んでいます。

 

これは、分かりやすい言葉で言うと「べき」という考え方や信念です。

 

物事はこうあるべき。こうした状況ではこうすべき。これは、私やあなたにもあり、誰もが持っている「価値観の辞書」です。

 

私たちがこれまで生きてきた中で経験したことや学んだこと、その積み重ねの中で編集された「辞書」なので、内容は人それぞれ違っています。つまり、コアビリーブは、社会一般が共有する「一般常識」とは異なるのです。

 

しかし、多くの人が自分の「べき」と「一般常識」とをイコールで結び付けるために、自分の価値基準で「NO」と判断した怒りには、社会的にも正当性があると思ってしまうのです。

「怒り」への対処法・防御法

「怒り」の発火点「べき」を否定しない

 

「こうすべきだ」と怒っている人に対し、怒られている人も「いや、そうではなく、こうすべきだ」と反発を感じることもあるでしょう。

 

価値観の基準は、人それぞれ違うのだから当然です。

 

しかし、「価値対価値」のぶつかり合いは、互いの「怒り」を増幅し合うだけで、議論をかみ合わせることすら難しくなります。また、怒られることで悩んでいる人にとっては、「違う」と思いつつも、反論もできないまま、「なぜ黙っているんだ!」と「べき」の追い打ちにあい、まったく余裕のなくなってしまうこともあるでしょう。

 

さて、「怒り」の発火原因にもなり得る、この「べき」にどう対処したらよいのでしょうか?

 

結論から言えば、怒っている人の「べき」は否定してはいけません。その人の価値基準を、その場で否定して、心から納得してもらうことなどはそもそも不可能ですし、そんなことを重ねていたら人間関係も、会社などの組織も、根本から崩れてしまいます。

 

現実的には、まずは相手の「怒り」を否定せず、自分にその被害が及ばないようにするのが有効です。

 

「怒りのピーク」を予測する

 

アンガーマネジメントには、「怒りのピークは6秒間」という考え方があります。

 

これは、自分の「怒り」が頂点に達しても、そのピークの6秒間さえやり過ごせれば、相手を強く怒ったり、強い言葉や態度で誰かとトラブルを起こしたりすることが回避できるという「怒り」の制御のコツです。

 

これは、怒る側が自己制御する技術ですが、怒られている人にとってみれば、まずは6秒間がピークと考えて、そこをかわすことを考えるのが重要です。

 

ただし、この6秒間を耐えても、あなたの周りにいる怒りっぽい人からは、またいずれ「怒り」を爆発させる、次の6秒間がやってきます。

繰り返し「怒られる人」の特徴は?

怒られやすい人

 

なぜあなたは繰り返し怒られるのでしょうか?

 

あなたに「怒り」をぶつける人はどういう人ですか?上司、取引先、顧客、同僚、家族…。

 

当然、その人の社会的な人間関係は、あなた以外にもあるはずです。その人は、誰にでも怒りをぶつけているでしょうか。

 

どんなに怒りっぽい人でも、全方位の人間に向けて「怒りのピークは6秒間」を常に発し続けてはいないはずです。

 

これまで確認してきた通り、あなたの中に、相手の怒りの根拠はないのですが、相手の怒りを誘発する「きっかけ」はあります。

 

怒られやすい人には、一般的に次のような傾向があります。

 

はっきりしゃべらない

怒りっぽい人は、意見が正しいか誤っているかではなく、議論の白黒の明確さにこだわる傾向があります。語尾があやふやだと、どんなに正しくても、「だから何なんだ!」と思いがちです。

 

相手に常にボールを渡しがち

「どう思う?」と聞かれても「こういう意見もあるし、こうした意見もありますね」と一般論や状況だけを説明して返す人や、「どうしたらよいでしょうか」と返す人は、そこに自分の意見や判断が含まれていません。常に判断を相手に求めるため、相手がイライラすることがあります。

 

話が長い

誤解されないようにと、一から十まで説明することで話が長くなり、「で、結論は?」と聞かれても、さらに説明が続き、なかなか話がクロージングしないと相手の怒りを誘発します。

 

自信のなさが表情や態度に出てしまっている

おどおどしていたり、自分から声を掛けたり、挨拶をしない人は、必ずしもそうではないのに、態度が悪そうに見えたり、反発している印象を与えたりするため、相手は「注意や指導」をしなければと思ってしまいます。

 

相手の「怒り」にあなたは関係ない

 

これらは、すべて改善できます。

 

最後の「自信のなさが表情や態度に出てしまっている」場合、私は、「口角を上げて、形だけでも表情を明るくしてみましょう」とアドバイスしています。それだけで相手との関係がずいぶんと良くなったことが多くあります。

 

しかし、怒られる側からすれば、「そうした態度や表情になるのは、何度も強く怒られ、心がへし折られてきたからだ」「普通、もっと丁寧な説明や忠告をしたっていいでしょう!」「怒るなんてそもそも間違っている」と思うことでしょう。

 

そうなのです。相手の「怒り」そのものはあなたに関係ない、相手の感情の発露です。それをあなたに向けるのはそもそも間違っているのです。

 

だから、現状を改善するのは「相手に間違いを認めさせてやっつける」ためではありません。大切なのは、あなた自身です。あなたを苦しめる他人にそこまで関わる必要はないのです。

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

宮本 剛志

時事通信社

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