「コミュニケーション意欲」を持たせることが重要に
「ことばがなかなか出ない」
「発語が少ない」
このような心配事を多くのお母さまからお聞きします。「ことばの発達は個人差が大きい」という話もよく耳にしますが、それでも心配は消えませんね。ことばの遅れが心配なとき、その子にとっていま必要な刺激は何なのか、見分けるポイントをご紹介します。
1.発声は多いですか?
ことばになる以前の発声が多くあること。これは発語へつながる大切なポイントです。発声が少ない場合は、くすぐる、「たかいたかい」のようなダイナミックな遊びをする、お子さんが発声したら同じ音を返す、などの働きかけをして、発声が増えるようにしましょう。
2.見返し行動はありますか?
目線が合うことは、コミュニケーションの第一歩ですが、喜び・驚き・発見をお母さんと共有しようと見返す行動は、特に重要です。ことばはコミュニケーションの手段ですから、発語の前に、見返し行動が見られることは必要なステップです。
あまり目線が合わない場合は、お子さんが遊んでいる場面にそっと寄り添い、同じようにおもちゃを触るなどして、気を引きながら意識的に目を合わせ、「たのしいね」と笑顔で語りかけるようにしてみましょう。
3.要求や興味を指さしで表現しますか?
何かが欲しいときや興味を持ったものに対して、指さしで「ほしい」「これなあに?」の感情を表現する行動も、発語の前に現れます。
このような指さしが少ない場合は、興味を持って絵本などを見ているときを逃さず、そっとお子さんの手を取り指さすような仕草をさせて「くまさん。かわいいね」など語りかけてみましょう。
4.発声のとき、いろんな声を出していますか?
いつも同じ音で発声するのではなく、いろんな声が出ることも大切です。ことばになっていなくても、なんとなく会話しているような抑揚で発声するようになると、そろそろことばが出るかな、のサインです。
1.お子さんが発声した音をまねて返す
2.興味を持って見返したタイミングで別の音を出す
というステップで、いろんな声が出るよう促してみましょう。
以上のポイントを通過していれば、発語は自然と促されていきます。コミュニケーションの意欲をお子さんが持つことが非常に重要です。
できないことの訓練よりも、背景にある課題の分析を
通常の療育では「できないことをサポートする」という立場で、苦手なこと・できないことを訓練するための課題を行うことが多いように感じます。
もちろん、スモールステップを設定したり、できるだけ楽しく取り組めるように考えたり、そのような姿勢は取られていると思いますが、「できないことを訓練」という姿勢は、やはり多くの療育の基本となっているのではないでしょうか。
筆者が運営している児童発達支援スクール「コペルプラス」では、できないことの訓練よりもできないことの背景に存在する課題に焦点をあて、子どもの能力自体を引き出すことが何よりも重要だと考えます。
たとえば、立ち歩くことが多く集中力が発揮できないお子さんには、着席して課題に取り組むことを強いるのではなく、なぜ着席することができないのかを分析し、
1.集中して見る課題
2.集中して聞く課題
3.適切なコミュニケーションのための課題
などをそれぞれ2~3分で実施します。
ひとつひとつの課題は、
1.目的が明確
2.2~3分の短時間で実施する
3.ゲーム性を高め子どもにとって魅力的なものにする
ことを大切に設定しています。
40分の個別療育には、子どもの目を輝かせるための明確な目的のある課題が20~30種類登場します。
コペルプラスの療育は、「訓練」ではなく「楽しい遊び」であり続けること。「いやでもがんばる」ものではなく「楽しいからやりたい」ものであること。そして、目が輝くような楽しい遊びを通じて、子どもたちが自発的に取り組む姿勢を身につけ自ら能力を伸ばすことをめざしています。
「できるようになる」時期は子ども本人が決めます。私たちはそのための準備を、子どもの中からできる力があふれてくるまで、常に全力で整えています。自ら力をつけた子どもたちは、人間が潜在的に持っている「人とつながりたい」「人の役に立ちたい」という意識をきっと発揮し、自分の存在意義を見つけてくれると信じています。
株式会社コペル 有元 真紀