前回に引き続き、株式の「公正価値」を求める具体的な手順を見ていきます。※本連載はジブラルタ生命保険株式会社勤務、冨島佑允氏の著書、『投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門 プライシング・ポートフォリオ・リスク管理』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、株や債券、事業や不動産などの「本来の価値」を推定するプライシング理論について解説します。

際限なく続く将来キャッシュフローを計算するには?

余談はここまでにして、話を戻しましょう。期待収益率の計算方法がわかったところで、いよいよ公正価値の計算です。ここで問題なのは、債券と違い、株式配当の将来キャッシュフローは際限なく続いていることです。したがって、公正価値を式で表すと、以下のようになります。

 

 

キャッシュフローが際限なく続くので、1本1本のキャッシュフローの割引現在価値を計算して足し合わせるという作業を繰り返しても、永遠に計算が終わりません。しかし、1年目の配当、2年目の配当、3年目の配当、そしてその後の配当が全て同じ金額の場合は、高校で習う等比数列の公式を使って簡単に計算することができます。

 

具体的には、株式の公正価値は以下のようになることがわかります。


例えば、予想配当額が50円、期待収益率が7.25%の場合、株式の公正価値は以下のように690円となります。

公正価値の計算には「成長率」の考慮も必要

実際には配当がずっと同額ということはなくて、設備投資などによって事業規模が拡大し、年々増えていくと考える方が自然でしょう。そのようにキャッシュフローが成長していく場合は、成長率を公正価値の計算に考慮する必要があり、以下のような式になります。

 

 

例えば、期待収益率が7.25%、来期の予想配当額が50円で、その後配当額が毎年2%ずつ増加していくと考えましょう。すると、公正価値は以下のように952円となります。

 

 

公正価値が、先ほどの690円よりも高くなりました。配当額が増えていく場合は、その分株式の価値も上がるということです。以上のように、配当額が不変か、一定の割合で増えていくケースでは、簡単な公式を使って公正価値を計算することができます。

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

冨島 佑允

株式会社CCCメディアハウス

投資に使える! 金融がわかる! これから始める人でもファイナンス理論の“あの独特な考え方”が一から理解できるように、資産運用に携わってきた金融のプロが 1.プライシング理論(“本来の価値”をどうやって求めるか?…

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