ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットに代表される世界の富裕層の多くは、自らの資産を活用して「財団」等を立ち上げ、社会問題の解決に挑むなど、積極的な社会貢献活動を行っています。日本ではまだあまり浸透していない社会貢献活動の可能性について、ファンドレイジングアドバイザーの肩書きを持つ宮本聡氏が解説します。今回は、日本の寄付市場発展に欠かせない「ファンドレイザー」について説明します。

NPOの資金調達を専門に行うプロフェッショナル

社会構造の変化により必要性は増しているにもかかわらず「日本には文化がない」とも言われてしまう寄付。その寄付が日本社会で根付いていくには、いくつかの課題があります。

 

一つは、税制をはじめとした制度の整備と認知拡大です。日本の寄付税制は、2011年の税制改正で、フロー(所得)に関しては劇的に強化されています。寄付金額に対して、2000円を控除したうえで最大で総所得金額等の40%相当額まで寄付金控除額となる制度は世界でもトップクラスと言えます。

 

問題は、ストック(資産)に対する税制が未整備なことと、そして「寄付金控除」の仕組みの認知度が低いことです。

 

そもそも税の仕組みに対する関心が低い日本人(特に給与所得者)は、もっと税への関心を持つ必要がありそうです。寄付金控除は、言い換えると控除額分まで納税者が__税の使い道を選べる__仕組みです。政府への不平や不満を言う前に、ぜひ自分の権利は行使していただきたいところです。

 

もう一つは、寄付の受け手であるNPOからの正しい発信。NPOの本分は困った人を支援する活動などの本来事業であり、寄付者に対するコミュニケーションは後回しにされがちでした。

 

しかし、財源の確保はNPOの活動の源であり、連載第1回目で紹介したフィランソロピストのような成果志向、未来志向の寄付者も増えてきています。適切に寄付者への発信をすることで、寄付者の参加感は増し、結果NPOへの支援も増えるでしょう。

 

その寄付者とのコミュニケーションの役割を期待されているのが、私たち「ファンドレイザー」という名の、主にNPOの資金調達を専門に行うプロッフェッショナルです。日本ではまだ認知度が低いですが、ファンドレイジングの手法の研究が進む米国では人気の高い職業となっています。

 

日本の寄付市場が健全に発展していくためには、寄付者と団体をつなぐファンドレイザーの存在が欠かせないでしょう。

 

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支援する側が「すぐに行動に移せる仕組み」が必要

さらにもう一つは、支援する側とされる側をマッチングする仕組みの整備です。寄付という行動はそのほとんどが“衝動”で起きると言っていいでしょう。NPOの活動への共感という衝動が沸き起こったその瞬間に、すぐに行動に移せる仕組みはもっと日常生活の中に存在している必要があります。

 

実際に寄付の先進国である米国では、たくさんの寄付の機会やツールが日常生活に存在しています。

 

インターネット化が進む現代社会においては、特にインターネット寄付の仕組みが、法的な面も含めてもっともっと整備されていくことが望まれます。最近では、寄付を集める仕組みとしてクラウドファンディングが多く活用され始めていますが、SNS等で広く拡散され、支援する側も参加者として楽しむことのできるこのような仕組みの広がりには期待しています。

 

制度の整備と認知拡大、ファンドレイザーの活躍、マッチング機会の増加、これらが揃うことにより日本の寄付市場はきっと発展・成長していきます。

 

必要不可欠なモノはほとんどが容易に手に入るようになったこの時代に、お金の使い道の一つとして寄付という未来への投資を楽しむことを考えてみてもよいのではないでしょうか。

 

日本はきっと善意に溢れた国です。困っている人の数倍、誰かの役に立ちたいと思っている人がいるはずです。そんな善意がもっともっと循環しやすく、寄付を通じて「だれもが応援しあう社会」になったらいいなと思っています。これを機会にぜひ一度、寄付について考えてみてください。

 

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