サプライチェーン・ファイナンス導入…協力会社の利用状況は?

下請取引に関する2016年末のルール改正に伴い、下請事業者への支払いサイト短縮が強く求められている親事業者。そんな中、世界で名を馳せる金属加工メーカー菊川工業株式会社が、支払いサイトの大幅な短縮を可能とする仕組み「サプライチェーン・ファイナンス」を導入した。その狙いは何か? 本連載では詳しく探っていく。 最終回は、サプライチェーンファイナンス導入後の協力会社の利用状況などについて、宇津野嘉彦社長にお話を伺った。聞き手は、電子記録債権を利用した決済プラットフォーム事業を展開し、サプライチェーン・ファイナンスを取り扱うTranzax株式会社の小倉隆志社長である。

金額ベースで4割超が早期資金化サービスを活用

――サプライチェーンファイナンスの導入によって、取引会社にはどのようなメリットが生じたと考えていますか?

 

菊川工業株式会社 代表取締役社長
宇津野嘉彦 氏
菊川工業株式会社 代表取締役社長 宇津野嘉彦 氏

宇津野 手形よりもはるかに安い利率で現金化できる点は一番のメリットでしょう。先ほどもお話したとおり、7月から主要な協力会社さん10社でサプライチェーンファイナンスを導入させてもらったところ、3~4割の会社が債権の買い取りを希望されて早期資金化サービスを利用されていますが、金額ベースでは4割を優に超えているのです。

 

――半数近くが低い利率での割引を利用されているわけですね。

 

宇津野 実は、支払期日を待つよりも、債権を割り引いてもらったほうが得をするケースもあります。債権を買い取ってもらう場合には1.2%の金利を徴収されますが、支払い期日を迎えて額面通りの金額が振り込まれる場合には振込手数料が発生します。10万円以下の小口の債権の場合は、割り引かれる金額は数百円で、振込手数料よりも安くなるケースもあるんです。

 

小倉 あとは、大半の支払いを現金で行ってきた菊川工業さんには当てはまりませんが、取り立ての手間がかからないというメリットもあります。通常、手形払いを受けた下請事業者は、期日を迎えた手形を銀行に持ち込むなどして現金化しなくてはならないんですよね。

 

手形そのものの管理のために金庫を用意して、支払期日をまとめた台帳も管理しなくてはなりません。サプライチェーンファイナンスを導入すると、自動的に期日にはお金が振り込まれるので、そういう下請事業者の手間も解消されるんです。

 

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信用リスク管理のコストを削減できる新サービスとは?

――では、サプライチェーンファイナンスの導入を経て、今後はどんな取り組みをされていく予定でしょうか?

 

宇津野 Tranzaxさんのおかげで業務の効率化が進んだので、今後は事業に集中して売り上げを伸ばしていきたいと考えています。そのためには市場の拡大が不可欠。当社の主要な取引先はスーパーゼネコンやサブゼネコンさんですが、今後は地方の中堅ゼネコンさんなどにも広げて行こうとしています。

 

ただ、地方に手を広げると、手形の支払いサイトが120日になったり、支払い条件に不安を感じることがあります。ですから、Tranzaxさんに頑張って頂いて、地方の中堅ゼネコンさんなどにもサプライチェーンファイナンスを導入して頂けたら、当社が早期資金化サービスを活用できて支払い条件の不安を解消できるのではと考えています(笑)。

 

Tranzax株式会社 代表取締役社長 
小倉隆志 氏
Tranzax株式会社 代表取締役社長
小倉隆志 氏

小倉 それでしたら、うってつけのサービスがありますよ。年明けから、「トランザクションファイナンス」というサービスを開始予定なんです。サプライチェーンファイナンスは支払いの仕組みですが、トランザクションファイナンスはお金を受け取る側の仕組みです。大手損保会社さんに保証をつけてもらうことで、支払い遅延のリスクや売掛先の倒産リスクを解消できるんです。そこに当社ならではの低利での債権の割引もつけます。

 

宇津野 それは面白そうですね。市場を広げていくためには、今までどおりの信用リスク管理では不十分だと考えていたところです。リスク管理のコストもばかになりません。私は、営業担当者に必ず「新規の取引先は本社に行って社長に会ってこい」というので、交通費だけでも結構な金額になってしまう。

 

小倉 かといって、未上場の企業は財務諸表を公表していませんし、信用調査会社に頼めば1通2万円ほどかかってしまいます。その点、トランザクションファイナンスはサプライチェーンファイナンス同様、導入コストはほぼゼロです。売掛が発生したら即換金が可能なので、取引先が倒産してしまっても取りっぱぐれはありません。そのリスクを背負うのは損保さんですので。

 

宇津野 信用リスク管理のコストを削減できるのは非常に魅力的です。ぜひ、実現の際には詳しくお聞きしたい。

 

小倉 すぐに担当者を派遣します!

 

――余談ですが、宇津野社長はデスクワークを立ちっぱなしの状態でやっていましたよね? なぜ座ってやらないのですか?

 

宇津野 それは、当社の職人たちが常に立って仕事をしているからです。社長だからって、私だけが椅子にふんぞり返って仕事していたら、不公平でしょう?

 

小倉 その発想は目からうろこです……。でも、だからこそフットワークが軽く、当社のサービスを真っ先に導入してくださったわけですね(笑)。

 

 

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取材・文/田茂井 治 撮影/永井 浩 
※本インタビューは、2017年10月16日に収録したものです。

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Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

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