住宅ローン返済「月13万円」だと…日本の平均的サラリーマン「60歳で破産!?」の衝撃

登場人物
・ゆめこさん(以下、ゆ)……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。

・ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。

・有識者のおじさん(以下、お)……難しい単語や複雑な制度を解説してくれる物知りな優しいおじさん。
・イエナガ マナブ(以下、主)……60歳。宿泊・飲食サービス会社勤務元部長。子供は2人。
・ハナエ(以下、妻)……イエナガ マナブの妻。57歳。元事務職で、現在はパート。

主:俺の名前はイエナガ マナブ。今年で60歳になり定年を迎えた。俺は大学卒業後に就職して、職場の同僚だった3歳年下の妻と結婚、その後2人の子どもにも恵まれ、43歳の時には夢のマイホームを購入した!

ゆ:順風満帆な人生に思えますね。

賃貸暮らしとマイホーム購入はどちらがコスパがいいかはそれぞれのライフスタイルや価値観によって異なります。何処に住むか、通勤・通学時間、収入に対する月々の支払額の割合などさまざまな要素が絡むため、一概にどちらが得かは言い切れません。賃貸と持ち家、一体どちらを選ぶ人が多いのでしょうか?

お:政府調査によると住宅全体に占める割合(持ち家住宅率)は約61%です。(参考:住宅の所有の関係|総務省統計局

ゆ:持ち家の方が人気です。

一方で、昨今の日本では不景気の影響で、自分の家をもつということに二の足を踏む人も多くなっています。

お:調査によると、2005年住宅金融支援機構の利用者の年齢は平均約38歳、平均世帯年収は623万円です。しかし、15年後の2020年度は、利用者の年齢は平均約43歳、平均世帯年収は598万円に落ち込んでいます。この15年で利用者の年齢は5歳上がり、年収は25万円下がっています。

ゆ:「マイホームに住む」という夢を叶えるのが、ここ15年間でより難しくなっているというのが現実です。

主:実際に俺も、家を買うべきかどうか随分悩んだよ。でもやっぱり、買ってよかった! 妻も子どもたちものびのび暮らせて、大喜び。いい買い物だったと思っている!

ゆ:ところで、マナブさんは今年定年を迎えましたね。定年後の返済には、退職金をあてて繰り上げ返済をするパターンが定石ですが、マナブさんは?

主:俺は、定年後に再雇用制度を使って働き続けることにしたんだ! これからも給料でローンを支払う予定…だったんだが……

ワ:あれ、どうしたの?

主:実は、いざ再雇用制度を利用してみると、思ってたのと違くて…。定年後の再雇用制度を使うと、役職は引退。その分給料も減らされて、年収が189万円もマイナスになった。給与が減ったからって、住宅ローンの返済額が変わるわけじゃない! 生活を切り詰めないと、月の賃金だけで生活していけなくなったんだ。

お:こうした悲劇は現代の日本で往々にして起こるケースです。たとえば、日本人の平均年収433万円で考えてみましょう。もし、返済負担率が上限ギリギリの35%だとしたら、1年で約152万円かかります。定年によって賃金収入が3割減少すると、300万円の年収で152万円の返済をしなければならないということになります。

ゆ:つまり、返済負担率が年収の50%以上を占める状況になります。

一般的に、家賃は給料の1/3以内に抑えるのが望ましいと言われています。老後の家賃負担軽減を期待してマイホームを購入した人にとっては、「聞いてなかった!」となる数字です。さらに、マイホームをもつことでかかる費用は住宅ローンのみではありません。固定資産税、修繕費などがあります。

主:こうなることが分かっていたら、賃貸暮らしを続けた方がよかった。私が借り入れをした40代のときは働き盛りで、右肩上がりに給与が上がっていた時期だ。定年後も働けるなら「なんとかなるだろう」と思ってたんだが…甘かった! うちは30年ローンだから返済が終わるのは73歳。俺は一体、どうしたらいいんだろう…。

ゆ:晩婚化の影響や、非正規雇用者の増加により住宅ローンを組む年齢は上昇傾向にあります。自分は何歳まで働くのか、何歳でローンを完済するのか、しっかりシミュレーションしたうえで住宅ローンを結ぶことが大切です。

主:俺はとりあえず、節約をしてみることにした。

ワ:いいね!

主:俺は資産運用をしていないし、不労所得もない。給与内でなんとかするしかないんだ。収入が上がらない以上、支出を減らすしかない。ゴルフクラブにジム、会員契約を解除して、趣味の釣り道具も売ることにした。とほほ……。

妻:ねえ、あなた…やっぱり退職金をローンの返済に充てて、繰り上げ返済をしたほうがいいんじゃない?

主:え? うちの会社は退職金が少ないから、まるっと全部貯蓄しようって話し合ったじゃないか。これから先の人生、毎月の生活費とは別にいつまとまったお金が必要になるか分からないんだぞ。ローンの返済も大事だが、老後資金の形成も大切だって、お前も言ってたじゃないか。

妻:あのときはそう思ったけど、このまま無理に節約を続けてたら、結局体を壊して医療費がかかってしまうわ。あなた、ゴルフもジムも行ってたときの方が毎日生き生き楽しそうにしていたし、食欲もあって元気そうだった。それに、あなたったら、一番の趣味だった釣りの道具まで売ってしまって……。心の健康のために、趣味はつづけるべきだわ。

主:むむ…だが、この先子どもたちにだって、何があるか分からないぞ。いざというときに、何もできなくとも、資金援助ぐらいはしてやりたい。

妻:子どもたちはもう独立して立派にやっているんだから、私たちは信じて見守るべきじゃないかしら。私も今は近所のスーパーでパートをしてるけど、何歳まで続けられるかは分からない。今のうちに退職金でローンを完済して、住宅費が浮いた分を貯蓄に回したほうが健全だと思うの。

主:妻に説得され、俺は頑なに手をつけようとしなかった退職金で、ローンの繰り上げ返済を済ませた。すると、毎月の生活費を切り詰めないといけないというプレッシャーがなくなり、ずいぶん気楽になった! それに固定費が大幅に減ったおかげで、定年前の暮らしの水準を保てるようになったんだ!

俺は趣味の釣りを再開した。休日が充実していると平日の仕事も集中できる。これからも充実した人生を歩んでいきたい!

ワ:マナブさん、いい笑顔だね!

ゆ:ひとつのことに拘りすぎず、広い視野をもつことが大切ですね。