写真提供:sustenキャピタル・マネジメント

世の中には株式や投資信託のほか、債券や不動産、金など、さまざまな金融商品が存在します。しかし、運用資金が1,800万円以内であれば「新NISA以外の運用を検討する必要はない」と、投信運用会社sustenキャピタル・マネジメントの岡野大代表取締役CEOはいいます。その真意について、詳しく話を聞きました。

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金融のプロが驚いた「新NISA」の魅力

2024年1月にスタートした「新NISA」(少額投資非課税制度)の口座開設が増加している。

 

NISAの口座数は2023年末時点で、一般NISAが1,161万、つみたてNISAが974万(計2,136万口座)だった。2024年以降の正式な数字はまだ発表されていないが、日本経済新聞社の集計によると、主要証券会社19社の1月末時点のNISA口座数は合計で約1,530万口座と、新NISA開始後の1ヵ月間で約4%増えたそうだ。なお増加分の9割をネット証券が占めたという(2024年2月13日付)。
※出所:金融庁、NISA口座の利用状況調査(2023年12月末時点、速報値)

 

「資産運用や資産形成を考える多くの個人投資家にとって、最優先で考えるべきは『新NISA』です。むしろ、運用資金が1,800万円以内であれば、新NISA一択でよいと思います」

 

こう話すのは、投信運用会社sustenキャピタル・マネジメントの岡野大代表取締役CEOだ。岡野氏は、新NISAのメリットを次のように説明する。

 

sustenキャピタル・マネジメントのCEO、岡野大氏
sustenキャピタル・マネジメントのCEO、岡野大氏

 

 

岡野氏「新NISAの最大のインパクトは、非課税投資枠が大幅に拡大したことです。旧NISAの非課税投資枠は、一般NISAが600万円(年間120万円×5年分)、つみたてNISAが800万円(年間40万円×20年分)でした。しかも、両方のNISAは併用できず、どちらか一方を選択する必要がありました。

 

しかし、新NISAでは制度が一本化され、非課税投資枠が合計1,800万円(つみたて投資枠が最大1,800万円、成長投資枠が最大1,200万円、2つの枠を合計して最大1,800万円)に拡大されたのです」

 

また岡野氏は、非課税投資枠の拡大に加えて「非課税期間の無期限化」も大きなメリットだと指摘する。

 

岡野氏「旧NISAでは、非課税期間は一般NISAが5年間、つみたてNISAは20年間という制限がありましたが、新NISAではこれが無期限化されました。このメリットは絶大です。

 

非課税投資利用額というのは簿価で計算されます(簿価残高方式)。たとえば100万円を投資した証券(投資信託)の含み益が200万円になり、資産が300万円に増えても、NISAの利用額は300万円にはなりません。投信を売却しない限り、NISAの利用額は簿価の100万円のままです」

 

その結果、複利効果で利益をどんどん積み増すことが可能になるという。

 

岡野氏「最終的には非課税投資枠いっぱいの1,800万円分を使って、資産を2,000万円、3,000万円、4,000万円……と、人間の寿命を考えなければ、理論上は半永久的に増やしていくことが可能です。もちろん、増えた分の利益に税金はかかりません」

 

この2つの大きなメリットを持つ新NISAの登場は、日本人の投資行動を大きく変容させるほどの影響力を持っていると、岡野氏は指摘する。

 

岡野氏「旧NISAでは非課税枠を使い切ったあと、投資余力のある人は特定口座など税金のかかる口座で金融商品に投資する人も多かったです。

 

しかし、新NISAの非課税投資枠は1,800万円もありますから、一部の富裕層や高所得層を除き、一般の個人投資家でその非課税枠をすぐに使い切ることができる人は限られているでしょう。つまり、投資をしたい人にとって、新NISA以外の課税投資を考える必要はなくなったと言えます。非課税枠を使い切ってもまだ投資余力がある場合に限って、税金のかかる口座での投資を考えればよいのです」

 

新NISA対象外商品は、最初から約2割『負けている』

一方で、新NISAの非課税口座で投資できる商品は金融庁によって定められているため、より幅広い商品群の中から、高利回りが期待できる商品などに投資したいと考える投資家もいるかもしれない。しかし、それは推奨できないと岡野氏は述べる。

 

岡野氏「投資においてリスクとリターンを考えるならば、あえて新NISA対象外の商品に投資するという考え方には賛同できません。日本の個人投資家にとっては、新NISAに対応できない投資は投資対象として劣後するからです。

 

というのも、新NISAを利用した投資は、それ以外の投資に比べて、リスクあたりの期待リターンが約25%(非課税分)高くなります。

 

たとえば、ある商品に投資して100万円の利益を得たとしましょう。新NISAでは丸々100万円が手元に残るのに対し、課税商品の場合は80万円しか残りません。この20%のギャップを投資戦略や戦術で埋めるのは、プロの投資家であっても決して容易ではないのです。最新の理論研究に基づいた投資戦略を使ったとしても、この差を取り返すのは困難でしょう。この点からも、新NISAの優位性がわかると思います」

 

このように、NISAには大きな利点がある。旧NISAは一般NISAとつみたてNISAの選択や、非課税期間が限定されているなど使い勝手の悪さから利用を見送っていた人も多いようだが、新NISAではそうした課題が改善された。

 

岡野氏「個人が資産運用を始める場合、経済合理性の観点から、新NISAを使わない手はありません。特に投資初心者や投資経験の浅い人が投資を考えるならば、『新NISA一択』と断言してもよいでしょう。まずは非課税投資枠を使い切るまで、課税口座を利用した投資を検討する必要はありません」

 

「新NISA対象外の商品に投資する考え方には賛同できない」と語る岡野氏。
「新NISA対象外の商品に投資する考え方には賛同できない」と語る岡野氏。

 

とはいえ…新NISAの“フル活用”は難しい

ここまで新NISAがいかに優れた制度なのかを見てきたが、新NISAを最大限に有効活用し、利益を極大化するためには、新NISAの制度を十分に理解する必要があると、岡野氏は指摘する。

 

岡野氏「実は、新NISAは非常に優れた制度である半面、思いのほか複雑です。制度を完全に理解してそのメリットをフルに享受することは、なかなか難しいのが実情といえます。

 

たとえば、『つみたて投資枠』と『成長投資枠』をどのように使い分ければよいのか、数多くの個別株と投資信託のなかからどの銘柄をいつ選べばいいのか、ポートフォリオはどのように組んで最適な状態を維持すればいいのかなど、考えなければいけないことが多々あります。

 

もちろん、いわゆる『全世界株式(オルカン)』1本に絞ればいいという考え方もあります。それは否定しません。

 

ただ、それだけではあまりにも“もったいない”というのが私の考えです。たとえ同じ銘柄に同じタイミングで投資したとしても、新NISAの使い方次第で将来の実際の収支に大きな差が生じる可能性があります。そのため、個人が資産運用を検討するうえでなによりも重要なことは『新NISAを最大限に有効利用する方法を考えること』だといえるでしょう」

 

では、岡野氏がいう「新NISAを最大限に有効利用する」ためにはどうすればよいのか。次回、具体的な方法を紐解いていく。