老後のひとり暮らしに待ち受ける5つの壁

「おひとりさま」は気楽で自由です。だからこそ本人の性格や生活スタイルが如実に現れます。そしてそれは、老後ひとり暮らしの壁を越えられる人と、見て見ぬ振りをする人との違いにも通じていると思います。

「そういえば自分は何も準備していない」「気にはなっていたけど何もしていない」と、あらためて感じる人もいるでしょう。一方で、自己管理や人付き合いが苦手なタイプの人は、「面倒だ」とか「いまから自分を変えるなんて無理だ」と感じたかもしれません。

でも、こう考えてみてはどうでしょうか? 「おひとりさま」だからこそ、リスクははっきりしていますし、的は絞れています。他人にアレコレ言われないからこそ、自分が必要だと思うことだけやっておけばよいのです。

本記事では次章以降、次の5つの壁について、不安の原因とかんたんな対策を述べていきます。

1.お金の壁

歳をとると判断能力が衰え、お金の管理が困難になっていきます。認知症になってしまうと、自由に預貯金をおろすことすらできません。また、収入がひとり分であることから、老後資金などを十分に準備することが困難となり、経済的なリスクが生じる危険性があります。

よく、ひとりだからお金がかからないといいますが、家賃にしても光熱費にしても食費にしても、夫婦2人で稼いで支出をシェアしたほうがはるかに効率的です。子どもがいるとまた話は別になるのですが、ひとりの気楽さから支出が増えてしまって、意外と貯金が少ない「おひとりさま」も多いのです。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)」によれば、60歳代のおひとりさま世帯の貯蓄額の中央値は300万円でした。「老後2000万円問題」のときと同じ計算をすると、2022年の試算では老後800万円が必要ですから、まったく足りません。もっとも3000万円以上の世帯も16.9%、金融資産保有なしの世帯も28.5%あって、平均値だと1388万円になります。

2.健康の壁

体調を崩した際のセルフケアが難しく、健康を害するリスクがあります。高齢者の場合、体調不良時に適切な治療を受けることができず、重大な病状に陥る可能性があります。

特に問題となるのが、大きな病気や怪我で入院するときです。通常、病院に入院するときには、支払いの連帯保証人、万が一の事態に備えての身元保証人、そして自分が意識不明になったときに職場や大家さんなどへの連絡や着替えの洗濯などちょっとした用事を代行してくれる世話人が必要になります。同居人のいない「おひとりさま」の場合、これらを誰に頼むかが難問となります。