知的障害の発生要因は?
知的障害を発症した人は、日常生活で様々な不自由が生じるようになり、障害の程度によっては通常の生活環境において支援が必要となるケースがあります。複雑な物事の理解や文章・会話の理解、日常生活内のちょっとした計算が苦手になる場合が多く、障害は個人差が大きいため、少しの交流だけでは障害があることを感じることができないこともあります。知的障害自体は、発生する要因が様々ではあるものの、発生時期によっては特定することが可能であると考えられます。
■生まれる前
遺伝子や染色体などの異常による内的要因、母体の感染症や薬物、外傷などの外的原因など
■周産期(妊娠後期(満28週)~新生児早期(生後1週間以内))
出産トラブルによる低酸素や循環障害の発生など
■生まれた後
事故などによる頭部外傷、感染症や不適切な生活環境、虐待など
障害の発生タイミングによっては、重度の障害になるケースやあることや、障害のレベルや得意不得意の個人差が大きいということもあり、自立のための支援も一般的なものはなく、それぞれの状態にあった環境に身を置くということが重要となります。
知的障害の発生時期に関連して、知的障害の一般的な症状は以下の3つとなります。
・相手の言葉の意味を理解できない
・ものごとをうまく伝えることができない
・臨機応変な行動ができな
知的指数である「IQ」と日常生活での「適応能力」
知的障害の種類は、重症度ごとに分類されており、18歳頃までの発達期に発症したかどうか、知的指数であるIQと日常生活での適応能力を総合的に判断して、重症度が決定されます。
■IQとは?
知的障害を診断する指標のひとつであるIQは、知能検査によって測定することができ、数値が低いほど重症度が大きくなります。一般的に知られている検査方法には、ウェクスラー系知能検査というものがあり、年齢によって適用される検査方法が変わります。この検査方法を開発したウェクスラーは、知能というものを「目的に行動し、合理的に思考し、環境を効果的に処理するための、個人の集合体ないし全体的能力」と定義しました。
しかし、IQだけで知的障害であることを判断することはできませんし、IQが70以下であったとしても適応能力が高い場合には、知的障害ではないと診断されるケースも存在します。
■適応能力とは?
適応能力とは、日常生活において他人からの要求に対して適切に対応し、自立していることを表す能力のことです。日常生活に必要な能力が同年代の人と比べてどれほど低いか基準として判断します。ものの量や時間といった概念的なものごとへの理解力やコミュニケーション能力といった日常生活を過ごす上で必要な能力が評価の対象となります。
4段階に分類される知的障害の障害程度
知的障害の障害程度は、IQと生活能力それぞれを4段階で区分されており、その組み合わせにより決定します。
■最重度知的障害:IQが20未満
・目の前にある物理的なものに限って認識が可能でありが、常に支援が必要
・起床後から入眠までのすべての日常生活において支援が必須
・身振り手振りといった簡易的なコミュニケーションでも理解が難しい
■重度知的障害:IQが21~35
・文字を読んだり、金銭の計算といったことへの理解が難しく、支援が必要
・すべての日常生活における行動では、継続的な支援が必要
・単語でのコミュニケーションや簡易的なやりとりは可能
■中度知的障害:IQが36~50
・小学生レベルでの読み書きや計算が可能であるが、自立までに長期間がひつようである
・意思決定は難しいものの、簡単な対人コミュニケーションは可能
■軽度知的障害:IQが51~70
・支援を受けながらであれば、読み書きや計算を理解することが可能であり、読字や金銭などの概念を理解することができ、日常生活を自立して過ごすことができる
・パターン化されたコミュニケーションとなることが多い
・ものごとの記憶や計画、自身の感情コントロールが難しい
重症度に応じた特長はあるものの、適切な支援を行うことで、徐々に自立していくケースもあります。重症度によっては長期間でものごとの理解を深めることで、知的障害を持ちながらも一般的な生活を送ることもできるでしょう。
同じ知的障害といえど、程度に応じて必要とされる支援も変わってくるので、知的障害を持つ人がどのレベルであり、得意不得意の認識を正しく持つことが重要です。障害を持ちながらも生活能力を向上させたり、自立した生活を過ごすためにも、適切な支援を受けることを意識していきましょう。