日本の少子化が止められない原因は「出生意欲の低下」だった!?

「2022年の出生数は80万人を割り、わずか7年で20%以上減少する危機的な状況だ」と警鐘を鳴らしている話題の本があります。日本総合研究所調査部・上席主任研究員の藤波匠氏が書いた『なぜ少子化は止められないのか』(日経プレミアシリーズ)という本です。

これまで日本の少子化が進む原因は、若者のライフスタイルが変化し、晩婚化・非婚化が進んだことが主な原因とされてきました。ところが、2016年以降に出生数の減少スピードは急加速を始めて、年率1%程度だった減少率が年率3.7%にもなっています。そしてその原因は、晩婚化・非婚化ではとても説明できないと言います。

2000年から15年かけて、日本の出生数は20万人減少して100万人となりました。それが、2016年からわずか7年で20万人以上減少して、ついに80万人を割り込む事態となったのです。

もちろん、新型コロナ感染症の影響が大きかったことは間違いありませんが、実は感染症が発生する4年も前の2016年から、出生数の大幅な減少は始まっていました。いったいその原因は何だったのか。

実は、若い世代の賃金が上がらず10歳上の世代と比べて、同じ年齢時の年収で比較すると150万円も少ないことがその背景にあることがわかりました。

具体的には、著者の藤波氏が属するバブル世代(1963〜67年生まれ)に比べて、10歳若い団塊ジュニア世代(1973〜77年生まれ)は、40代後半の実質年収が150万円ほど少ない、と同書では分析しています(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」および総務省「消費者物価指数」より)。

そして、「子育て世代にとって、年収の150万円という数字は大きな金額です。ここまで下がってくると、やはり結婚相手となる女性の収入は気にかかりますし、たとえ結婚しても、子どもの数を抑えようという発想になっても不思議ではありません」と同書では指摘しています。

つまり、「出生意欲の低下」が出生数の低下に大きな影響を与えている、ということです。

実際に、早い時期から少子化対策に取り組み、しっかり予算付けをした国々でさえも、経済環境の悪化によって出生率が低下しているフランスやフィンランドの事例もあります(同書)。